介護施設が「デジタル化」に取り組んだら起きた事

見える化とカイゼンの徹底で何が変わったのか

DXを本気で進めるためには、どうしたらいいのか。介護現場での例を取り上げる(写真:8x10/PIXTA)

中小企業がデジタル化を進めるうえでの課題が近年注目されている。経済産業省の「DXレポート」では、DX化が進まない理由には、「ビジョンと戦略の不足」「経営層意識と人材の不足」「老朽システム」などが指摘されている。

今やDXという言葉はあちこちで使われているが、そもそもDXとは何なのか。一般に、DXには3つ段階、①デジタイゼーション(digitization):アナログ・物理データのデジタル化、②デジタライゼーション(digitalization):個別の業務・製造プロセスのデジタル化、③デジタルトランスフォーメーション(digital transformation):組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革、からなると言われている。

「本当のDX」に取り組む介護企業

すでに、①、②については事例が増えているが、③についての成功例はなかなか報道されていない。

トイザらス・ドット・コム・ジャパンを立ち上げ、三越伊勢丹グループの役員兼WEB/EC事業部長を歴任した中島郁氏に言わせれば、「DXはデジタルを使った全社の強み化」。つまり、DXは単なるデジタルツール(端末、クラウドなど)の導入ではなく、こうしたツールを通して全社の底力を引き上げることだとしている。

こうした中、DXを進め、そしてそれで業界全体に影響を与えようしている介護企業がある。「経営層の意思決定×業務カイゼン×人材育成」の徹底を通して、③にあたるDXに取り組んでいるのが、社会福祉法人善光会だ。

善光会は2005年に設立された社会福祉法人で、「オペレーションの模範となる、業界の行く末を担う先導者となる」ことを掲げている。その背景には、社会福祉法人では競争原理が働きにくいことや超高齢社会の到来、介護待機者の存在、介護財政への不安といった一連の問題の解決を担いたいという思いがある。

現在は特別養護老人ホームや老人短期入所事業などのほかに、社会福祉に考える研究調査事業を展開している。また、介護ロボット・人工知能研究室や福祉関連事業者の経営支援を行う研究所も設立。一連のDXにまつわる取り組みが介護業界内では注目されている。

同社を率いる宮本隆史最高執行責任者(COO)は、新人社員として善光会を入社して30代で理事、そしてCOOに就任。DXをツールとして介護の効率向上のため、精力的に活動している。

善光会は、既存業務におけるDXを検討する際、まず現状業務の「見える化」を行った。DXを通してどういう新しい価値を提供するかを検討するプロセスのファーストステップとして、現在、どういう内容にどのくらい時間を使うか明らかにした。介護施設の業務の「見える化」、そしてトヨタ式「カイゼン」を導入したのである。

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