日本人はもう気軽にマグロを食べられなくなる 「中国に買い負ける」マグロ市場の悲しい実態

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こうした世界での買い負けの原因は、ほかにもあります。

水産物に対する舌が肥えている日本人を消費者として抱える日本の水産業者は、海外で買い付ける際、要求が高すぎるのです。品質や規格が基準に見合う品物だけを選別することはもちろんのこと、在庫を抱えるのが悪とされているので小ロットで発注します。一方、米中の業者は細かいことは言わず大ロットで仕入れる。品質重視はいいことですが、どちらがお客さんとして歓迎されるか、言わずもがな。

そんななか、マグロに限らず日本市場は海外の生産者にだんだん相手にされなくなってきているのです。水産業界の三大展示会の開催地はアメリカ、スペイン(2021年まではベルギー)、中国で、残念ながら日本は入っていないことを見てもよくわかります。

日本人が好むクロマグロは「絶滅危惧」に引き上げ

マグロに関しては世界市場での買い負け以外にも気がかりなことがあります。それがクロマグロ保護を訴える環境保護団体の動きです。

2014年、国際自然保護連合(IUCN)は、太平洋クロマグロの絶滅の恐れについて「軽度の懸念」から「絶滅危惧」に引き上げました。このとき、元凶として名指しされたのが、当時太平洋クロマグロの9割が消費されていた日本でした。

そして翌年、太平洋クロマグロは国際的な漁獲規制の対象となりました。未成魚(魚体重30㎏未満)については、各国ごとに2002〜2004年度の平均値から漁獲量を半減、また成魚についても同期間の平均水準以下にとどめなければならないという厳しいものでした。

これにより、日本の太平洋クロマグロの漁獲枠は小型魚で4007t、大型魚は4882tに設定されました。実はこの規制は、世界各国の環境団体から「クロマグロ乱獲」への批判が高まるなか、日本が自ら中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)に提案し、採択されたものです。

クロマグロの世界最大の消費国という立場を踏まえ、乱獲防止に取り組む姿勢を世界に見せる必要があったからです。その後、親魚の資源量が回復傾向にあることを受けて漁獲枠は多少見直されています。2022〜2023年の太平洋クロマグロの日本の漁獲枠は、小型魚4725t、大型魚7609tとなっています。

「マグロは養殖が可能じゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、天然種苗に依存しない完全養殖によるマグロの生産はまだまだ限定的で、野生の幼魚を漁獲して育てる「畜養」がほとんどです。野生の幼魚についても漁獲規制の対象となるため、すぐに養殖量を増やすということは不可能なのです。

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