日本人はもう気軽にマグロを食べられなくなる 「中国に買い負ける」マグロ市場の悲しい実態
さらに、釜山港は、世界最大規模の冷凍冷蔵キャパシティも擁していることから、コールドチェーン物流においては特に優位性を持っています。地中海産の養殖クロマグロをはじめ、世界各国から冷凍状態でアジア向けに輸出されるマグロは、多くの場合、まずは釜山港に上陸します。
そこで、そのまま最終目的地へ向かう別のコンテナ船に積み替えられることもあれば、一旦部位ごとに切り分けられて、再輸出される場合もあります。
中国や日本だけでなく、欧米ほか世界で消費される冷凍マグロの多くが、釜山港を経由していると言われています。韓国のマグロ輸出額は2022年、前年比で4%増となる6億250万ドルの輸出を達成しています(『中央日報』2022年12月14日付)。ちなみにマグロだけではなく、冷凍のカニやエビも釜山港経由で世界に届けられるものが多いといいます。
そうした事情から、釜山を中心に韓国にはマグロを専門とする水産会社がいくつもあります。また釜山には、欧州への輸出に必要な「EU HACCP」という品質管理認証を持っている加工工場も多いのですが、とても審査が厳しく、日本の水産工場で取得しているところは非常に少ないと言われています。
日本はというと、カツオとマグロを合わせた2019年の輸出額で153億円程度にとどまっているので、その差は歴然でしょう(令和元年度『水産白書』)。
寿司ブームの中国で人気なマグロ
そんな釜山のマグロ業界の最も大きなお得意様は中国です。
寿司ブームが到来して久しい中国ですが、マグロは寿司ネタのなかでも人気上位にランキングされます。なかでも中トロ、大トロを好む人が多く、質のいいクロマグロのトロであれば金に糸目をつけないという人も多いといいます。
もちろん前述のとおり、消費量においては今も日本が世界最大です。しかし、マグロに対する購買意欲の面では、中国市場のほうが勢いはあります。販売側の立場としては、同じものを売るなら、できるだけ財布のひももゆるく積極的な相手に対して売りたいと思うのが当然でしょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら