日本人はもう気軽にマグロを食べられなくなる 「中国に買い負ける」マグロ市場の悲しい実態

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総務省統計局による小売物価統計調査によると、全国のスーパーで販売されているマグロ100gの平均価格は2019年12月の時点では441円でしたが、2021年3月には400円にまで下落しました。

ところが、パンデミックから続いていた相場の下落傾向はそこで終わり、翌月以降は上昇に転じています。それからの上昇基調は現在でも続いており、2023年1月の平均価格は532円となっています。

2021年4月の時点で日本国内は依然として自粛要請が続いており、需要は本格的にはまだ戻っていなかったにもかかわらず、です。しかもロシアによるウクライナ侵攻はまだ10か月ほど先のことであり、石油価格も急激には上昇していませんでした。

そんななか、下落を続けていたマグロ価格はなぜ上昇に転じたのでしょうか。

理由として挙げられるのは、海外での需要急増です。

世界中のマグロが韓国を経由して中国に

日本とは対照的に、中国や欧米では当時、ワクチンの普及率や第一波の収束ムードが高まり、感染再拡大への警戒感は和らいでいました。そのため各国では一気に需要が復活していたのです。

もちろん、コロナ禍の影響でそれまでのマグロ水揚げ量が減少していたという事情もあるでしょう。それにしても、日本という世界一のマグロ消費国が不在のまま、世界需要の高まりのなかでマグロ価格が吊り上がったこの事例は、私にとって世界のマグロ市場における日本の存在感の縮小を実感させる一件でした。

日本は今でも世界のマグロ消費量の4分の1を占めるマグロ消費大国です。なかでも高級なクロマグロに限ると、世界の消費量の4分の3を日本が占めています。

しかし、日本が世界のマグロ市場で存在感を発揮していたのはせいぜい6、7年前くらいまでです。

現在、冷凍マグロの世界最大の集積地となっているのは韓国・釜山。釜山港は、中国沿岸部にも日本の主要都市にもアクセスしやすいという地の利もあり、極東アジアの海上物流のハブ港となっています。世界からやってきたコンテナ船は釜山港に停泊し、そのうちの日本行きの貨物は船を乗り換えて、最終目的地を目指すというのが主流となっています。

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