入園者0でも最高売上高「さくらんぼ農場」の秘策 震災やコロナ禍という大ピンチに見舞われた
私たちはこれまでに何度もピンチに陥り、失敗を繰り返してきました。
まずは、大学を卒業し就農してすぐに父(当時社長)と大喧嘩をして家出、離農し県外でサラリーマンをしたこと。2年後「やりたいことがやれる」と思って再び山形に戻ったのですが、2500万円の債務超過で補助金をいただくことも銀行から借り入れすることもできずマイナスからスタートしたこと。脱家族経営・脱どんぶり勘定を目指し、経営を改善している中、2011年に東日本大震災で売り上げを大きく落としたこと。
1つ目のピンチからは、農業の後継者を決め、育成することの難しさを感じました。2つ目のピンチからは、農業は思っていたより儲からないということ、農業の収益性の悪さを痛感しました。3つ目のピンチからは、自然災害の恐ろしさを体感しました。地球温暖化、異常気象の影響で農業はより不安定な産業になっています。
危機から学んだことを経営に活かす
危機から学んだことを経営に活かすべきだと考え、「後継者の育成」「儲かる農業」「自然災害リスクから農業経営を守る取り組み」など、少しずつですが具体的に進めてきました。
4つ目の大ピンチだったコロナ禍を乗り越えられたのは、今まで積み上げてきた経験と農業経営におけるさまざまな蓄積があったからです。経営理念や目標を掲げ、自社の強みを最大化する戦略・戦術を構築し、顧客からの信頼を積み上げ、人材育成や設備投資をしてきました。
強制的に変わることを迫られたコロナ時代に、私たちはさらに経営を強靭化できました。密回避や非接触が求められたため、果物を自動販売機で販売することも実現できましたし、草刈りロボットを導入しスマート農業を推進しました。その中でも、もっとも大きな成果は、新たなお客様や仲間とつながれたことです。そして、これまで持っていた固定観念を壊すこともできました。
創業して50年、2020年ははじめてさくらんぼ狩りの受け入れをお休みしました。そこで気づいたのが「観光農園」の大変さです。それまで、くだもの狩りを受け入れるにあたって、当然のように1日のスケジュールをお客様に合わせていました。
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