入園者0でも最高売上高「さくらんぼ農場」の秘策 震災やコロナ禍という大ピンチに見舞われた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2011年3月11日、東日本大震災が起きました。日本海側の山形県はほぼ実害はなく、燃料不足を除けば日常の生活を送っていました。この時点で年間売上高の約6割を稼がなければならないサクランボシーズンは、3カ月後に迫っていました。この時私は、「さくらんぼ狩りの入園者数は平年より減っても1割~2割だろう」という仮説をもとに何の対策も打たずにシーズンに突入しました。

結果は惨敗。入園者が平年の半分以下になったのです。この年は豊作で品質も良好、果樹園にはさくらんぼがたわわに実っていました。収穫する労働力を確保できなかったため、さくらんぼを大量に廃棄することになってしまいました。

悲観的に準備し、楽観的に行動する

今でもあの時のさくらんぼ畑の風景を思い出すことがあります。「あの時こうしておけば」という悔しい思いをずっと持ち続けていました。

そして2020年、新型コロナウイルスが日本で確認されると、「これはやばい」と直感しました。「観光農園」の売り上げが激減するという仮説を立ててすぐに動きました。頭をよぎったのはあの2011年の東日本大震災の悔しい経験です。「同じ轍は踏まない!」という強い気持ちでコロナ危機に対処しました。課題は2つ。「販売先の確保」と「さくらんぼを収穫する労働力の確保」です。

やまがたさくらんぼファーム代表の矢萩美智氏(写真:やまがたさくらんぼファーム提供)

やまがたさくらんぼファームは、ほぼ100%消費者への直接販売を行っているので、顧客の需要を敏感に感じ取ることができます。創業時から積み上げてきた顧客リストもあります。「観光がダメなら通販だ!」そう決断してすぐに観光農園の休業を決めました。強みの「観光農園」を捨て、もう1つの強みだった「通信販売」に賭けたのです。

社員のアイデアから生まれた「ワケあり倶楽部」という商品が大ヒットし、「販売先の確保」という課題を解決。「さくらんぼを収穫する労働力の確保」は、休館中だった天童温泉の従業員の皆さまに手伝っていただくことでクリアしました。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事