米国流「政策立案の技法」で考える「人口減少」対策 問題解決を「成果」につなげる8つのステップ
・地元就職促進の場合の費用と効果
次に、県外の大学に進学した人に対して、県内企業への就職を促す活動を強化する政策について成果予測を行う。例えば、地元の企業が行う就職説明会のために学生が帰郷する費用を補助するため、1人あたり往復交通費を3万円支援したとする。
100人の学生に支援し、実際に就職につながったケースが20件程度であったとしよう。ただし、これらでは、政策をとらなかったとしても地元に帰郷して企業に就職したであろう場合が一定割合を占めると考えられる。8割がそういうケースであったとして、地元への就職は4名しか増加しなかったとする。この場合、交通費300万円と周知費用等の諸経費(150万円と仮定しよう)を含めて年間450万円を用いて、4名の定住者増を実現することになる。
このときのGDP増の現在価値をさきほどと同様に計算すると、割引率5%のときに5.7億円、割引率10%のときに3.4億円となる。住民税収の増加分の現在価値は、それぞれ2900万円と1700万円となる。
これらの成果予測をまとめると、以下のようになる。
予測の不確実性に対処する
上記の①~③の試算は、米国の政策立案の「型」では、「アウトカム・マトリクス(成果表)」という。こうした表を作ることで、それぞれの政策オプションの特徴が浮かび上がってくる。今回の試算は極めて粗いものであるが、こうした分析を行うことなしに意思決定をするよりは、見通しがよくなるはずだ。
上記の成果予測において、最も不確実性の大きな部分は、地元就職促進のための帰郷費用を支援した際に増加する地元への就職者数であろう。上記では、100人に支援して4名純増すると試算したが、この点については不確実性が極めて大きい。
他県の実施例を調べ、費用を支援した学生の中で就職した人数を探すことで、ある程度予測を補強することは当然考えられる。他方で、政策効果として議論すべきは、政策の実施によって増えた純増数であるが、どの学生が施策なしでも就職したであろう学生なのか見極めることは難しい。
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