米国流「政策立案の技法」で考える「人口減少」対策 問題解決を「成果」につなげる8つのステップ
ステップ8:ストーリーを語る
立案した政策の内容は、分かりやすく聞き手に伝えていく必要がある。「8つのステップ」で紹介されているノウハウの一つは「ベッシーばあさんのテスト」だ。理解力は高いが政治に疎いベッシーばあさんを想像し、短時間で分かりやすく説明できるかをイメージトレーニングするというものだ。おばあさんが飽きないよう、専門用語などを使わずに、自分の言葉で1分以内に説明できるかを確かめる。
それ以外にも、自分が行った分析を全て紹介しないこと、「8つのステップ」の順番どおりに説明しないことなど、様々な注意事項が示される。
筆者のグループでも、推奨する政策オプションを決める一方で、かなり早い段階からプレゼンテーションの準備を始めることにした。説明のストーリーを練りながら、そこで気付いた論点を追加で分析するなどした。
紹介した事例は、あくまで8つのステップをイメージしやすくするための例示であり、こうした政策をぜひ採用すべきだという趣旨ではない。また、仮に政策立案として妥当であったとしても、実現するためには、細部の詰めや関係者との調整も必要となる。筆者らに依頼を行った県では、結果的に類似の施策を導入しているが、関係者の尽力があって実現したものであり、筆者らの政策立案の結果だとは毛頭思っていない。
一方で、紹介した事例で示したように、日本においても、米国の政策立案の「型」を用いて段階的なステップを踏むことで、個々の政策オプションのメリット・デメリットを示して判断材料を提供することが可能である。
日本においても、霞ヶ関などの行政組織においては、今回紹介したような方法に似た思考方法を経て政策が立案されていると考えている。他方で、行政機関職員は、政策プロセスに従事する中で、OJTにより暗黙知のような形で政策立案の方法を学んでいく。「8つのステップ」のように、政策立案の詳細なノウハウが言語化されて共有されているものではない。
米国の公共政策大学院の卒業生は、連邦、州政府だけでなく、市などの行政組織、NGO、民間企業の投資部門など、様々な分野で活躍している。政策立案の「型」を身につけた人材が、地域レベルの問題から、国レベルあるいは身近なコミュニティレベルの問題まで、様々な問題解決に取り組んでいる。これには、政策立案の方法を可視化し、学校で学ぶことができるスキルにしたことが大きい。
こうした政策立案の「型」を身につけた人材が増えることで、日本社会の政策立案力が高まり、政策立案が活発化すること、政策立案の「型」が、日本でもさらに普及していくことを期待したい。
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