中国で爆売れ「超小型EV」が"急失速"の複雑な背景 ライバルメーカーも続々登場、テコ入れも図る

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・長安汽車「Lumin」

大手国有メーカーの長安汽車は2022年6月に超小型EV「Lumin」を発売した。価格は宏光MINIの最安グレードより1.5倍ほど高い4万8900元~6万3900元(約97万~126万円)。

その分、宏光MINIより車体がやや大きく、スマートロック機能や車内ディスプレイを搭載するなど、走行体験の向上にも気を配ったバランスの取れた製品にした。エアバッグも標準装備しており、安全性でも一歩抜きんでている。

中国EV
長安汽車「Lumin」(写真:長安汽車公式サイトより)

長安汽車は宏光MINIやQQ 氷淇淋の最安バージョンが「注目を集めるための戦略的価格」で、実際にはそれほど売れていないと分析し、価格を上げて装備を充実させた。その作戦が当たり、2023年6月の販売台数は前月比2223台増の1万714台。発売から1年で宏光MINIの背中を捕らえる寸前まで来ている。現時点で最大のライバルだ。

・吉利汽車(Geely)「熊猫(パンダ)mini」

民営大手の吉利汽車は今年2月、女性消費者の好みに全振りした「熊猫mini」を発売した。こちらも価格は3万9900元(約79万円)~と、宏光MINIより数十万円高い。より遠出ができるよう航続距離を延ばしたり急速充電機能を強化し、既存車種と差別化を図った。

吉利汽車(Geely)「熊猫(パンダ)mini」(写真:吉利汽車公式サイトより)

熊猫miniは出足が非常によく、吉利汽車の2月の世界販売台数を前月の5位から3位に押し上げた。3、4月の販売台数は1万台を超えたが、直近の6月は7238台とやや失速している。

超小型EV市場には他にも複数のメーカーが新車種を投入しているが、今のところまとまった数字を出しているのは宏光MINIとこれら3車種の計4車種になる。

市場をつくった宏光MINIの知名度が他を圧倒する中で、後発メーカーの判断は価格で勝負するか、価格を上げて機能を充実させるかに分かれたが、選択肢が増えた結果、後者に消費者が流れている。

「超小型EV」市場に暗雲

宏光MINIの不振は同車種だけの問題というより、超小型EVブームが一服し、市場が飽和していることが最大の要因との見方もある。

乗用車市場信息聯席会によると、2023年1~6月の超小型EV(A00級、ホイールベース2~2.2m、排気量1000cc以下)の販売台数は前年同期比40.7%減の30万9276台。新エネルギー車の同期間の販売台数は37.3%伸びており、大きさ別では超小型カテゴリーの独り負けになっている。

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