中国で爆売れ「超小型EV」が"急失速"の複雑な背景 ライバルメーカーも続々登場、テコ入れも図る

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2022年11月の販売台数は前年同期比13.8%減の約3万2000台。12月は多少持ち直したが、2023年に入ると減少に歯止めがかからなくなり、6月の販売台数は2万台を割った。

中国汽車工業協会によると6月の新エネルギー車の販売台数は前年同月比35.2%伸びており、宏光MINIの凋落が際立つ。中国メディアや自動車業界は、補助金の終了に加え、同車種が創造した格安超小型車EV市場が大手の参入によってあっという間にレッドオーシャン化し、パイを奪われたことが原因だと分析している。

値上げのたびにブレーキ

宏光MINIはEVとしては激安で、購入者は小規模都市や農村に集中している。購入を検討する消費者の多くがEVでなく、ガソリン車や小型トラック、電動三輪車と比較していると言われ、宏光MINIの値段が上がるたびに販売にブレーキがかかる。

同車種は2022年3月、原材料高を理由に平均1割強の値上げを実施した。最低価格が3万2800元(約65万円)となり割安感が薄れたことから、翌4月の販売台数が発売以来初めて前年実績を下回った。

今年1月以降の販売急落は、中国政府が10年以上にわたって続けていたEV向けの購入補助金が2022年で終了した影響も大きいと見られている。補助金打ち切りの影響はEV全体に及んだが、価格に敏感な層をターゲットにした低価格帯EVの落ち込みの方がより大きく、長引いている。

宏光MINIがヒットした当初、中国では、「価格なりの品質」「おもちゃ」という声も少なくなかった。だが、価格破壊によってEVの購入者層を大きく広げ、新たなマーケットを創造した功績は大きい。その結果大手が続々参入し、競争が激しくなった。この1年半で、以下のライバルが現れた。

・奇瑞汽車(チェリー)「QQ 氷淇淋(アイスクリーム)」

宏光MINIの競合として最初に登場したのは、老舗メーカー・奇瑞汽車が2021年末に発売した「QQ 氷淇淋(アイスクリーム)」。外観、性能を宏光MINIにかなり寄せつつ、発売時価格は宏光MINIより若干安く設定した。よくある「そっくりだけどさらに安い」製品だ。

中国EV
QQ 氷淇淋(写真:奇瑞汽車公式サイトより)

QQ 氷淇淋の2023年6月の販売台数は6041台。原材料価格の高騰などで、超小型EVは発売以降少しずつ値上げされてきたが、同社は7月に2万9900元(約59万円)と3万元を切る同車種の限定バージョンを発売し、エアバッグと空調をなくして徹底して価格で勝負する戦術を維持している。

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