国連も調査「ジャニーズ問題」に企業はどう対応? CMスポンサー企業や日テレ、電通に尋ねた

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ジャニー喜多川氏がすでに死去しているので事実確認が難しいというのも免罪符にならない。

「人権侵害があったという告発があった場合には、どのようなものであれ、それを真剣にとらえ、指導原則にのっとった形で適切な調査を行うことが重要」。作業部会のダミロラ・オラウィ議長は会見でそう述べた。

アサヒグループの対応は、指導原則の目指す姿と隔たりがあると言える。だが、対応の有無を明らかにしなかった企業と比べると、まだいい。それらの企業は、ステークホルダーへの説明責任を果たしていないばかりか、きちんとした人権対応をとる意思があるのかと問われかねない。

「黙殺は人権侵害に加担しているという認識が大きく欠如している。そこを抜本的に転換する必要がある」。人権問題に取り組むNGO「ヒューマンライツ・ナウ」で副理事長を務める伊藤和子弁護士は、そう指摘する。

取引を止めればいいわけでもない

取引先企業は今後どうしていくべきなのか。タレントを自社広告に起用している企業であれば、契約満了を待って取引を停止するのがいいのか。ところが話はそう単純ではない。

取引停止は、問題が発生した企業を孤立させ、人権侵害の被害をかえって深刻化させる可能性があるからだ。あくまでも取引関係をテコにして問題解決へ影響力を行使することが、現在、企業の人権対応では求められている。

企業のサステナビリティ戦略を支援するオウルズコンサルティンググループの若林理紗氏は、一例として次のように提案する。

「人権状況の改善要請の例としては、独立性が担保された第三者による徹底的な調査や経営陣の刷新を含めたガバナンスの改善を要求するといったことが考えられる。それを契約更新の条件とし、1年後に改善が見られない場合には契約を終了するなど、段階的に取り組むことが望ましい」

今回のジャニーズ問題をもはや看過することは許されない。この問題に頬被りしてフェードアウトしたことが先例となれば、その企業にとっても大きな禍根を残しかねない。

国連人権理事会・作業部会の会見
会見を開いた国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会のダミロラ・オラウィ議長(右)とピチャモン・イェオパントン氏(記者撮影)

国連の作業部会はさらなる情報収集を今後行う。日本政府や企業などに対する人権保護の提言を盛り込んだ最終報告書を2024年6月の人権理事会に提出するという。

日本政府は国際的な競争力強化に資すると「ビジネスと人権」を巡る政策を推進してきた。この問題をおろそかにすれば、「日本企業の人権対応に問題あり」との評価を海外から下されかねない。

「スポンサーの企業も、勇気や正義をもってよりよいクリーンな日本をつくってもらえれば」。当事者の会のメンバーの一人は、会見でそう訴えた。この声をどう受け止めるのか。取引関係にある企業も重大な岐路にあることを自覚すべきだ。

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