ジャニーズ問題で「沈黙メディア」が問われる姿勢 テレビ局大手やエンタメ企業は今後どうする?
「海外の人権問題は徹底的に批判するのに、もっと近くにあった問題はちゃんと取材して知ろうとしませんでした。なぜ『沈黙』してしまったのか、重く問われているという覚悟のもとに向き合っていきたいと思います」(日本テレビ「news zero」の有働由美子キャスター)
ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長による性加害問題について、同事務所の設置した特別チームが調査報告書を公表した8月29日。夜に放送されたテレビ各局のニュース番組は、贖罪のコメントであふれた。
「外部専門家による再発防止特別チーム」(座長・前検事総長の林眞琴氏)の調査報告書は、ジャニー氏の性加害行為を事実として認定、「極めて悪質な事件」と断じた。未成年者に対し、強制わいせつ罪等に該当し得る性加害を長期間行い、被害者数は多数に上るであろうとした。
原因として、ジャニー氏の姉の藤島メリー泰子氏(故人)による放置と隠蔽や、「見て見ぬふり」を続けた事務所の不作為を指摘。加えて言及したのが「マスメディアの沈黙」だ。大半のメディアが沈黙し批判しなかったことから、事務所は隠蔽体質を強めたと分析している。
「もみ消しに加担」との指摘も
「事務所のアイドルタレントを自社のテレビ番組等に出演させたり、雑誌に掲載したりできなくなるのではないかといった危惧から、ジャニー氏の性加害を取り上げて報道するのを控えていた状況があったのではないかと考えられ」、と「沈黙」の背景を推察している。
この「沈黙」は、国連の人権理事会「ビジネスと人権」作業部会の専門家が8月4日に発表した訪日調査終了時のステートメントに通じる。ジャニーズ問題についての記述の中で、「日本のメディア企業は数十年にわたって不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている」と述べていた。
メディアはこのような指摘をどう受け止めるのか。NHKや日本テレビ、テレビ朝日などの主要テレビ局、さらには松竹や東宝などのエンタメ企業に見解を尋ねた。質問を送付したのは、特別チームの調査報告書公表前の8月21日。1週間ほどの期間を設けて各設問に書面で回答してもらった。