ジャニーズ問題で「沈黙メディア」が問われる姿勢 テレビ局大手やエンタメ企業は今後どうする?

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一方、回答が判然としなかったのはNHK。「性暴力について『決して許されるものではない』という毅然とした態度でこれまで臨んできました」と答えるにとどめている。

「もみ消しへの加担」と並んでもう1つ聞いたのは「今後の対応」だ。人権デューデリジェンス(自社や取引先における人権侵害リスクを特定し、防止や軽減策を講じること)を進め、ジャニーズ問題だけに限らず取り組む考えがあるのかを尋ねた。

この質問には、日本テレビが「人権尊重を重視しつつ取引先企業と対話を続ける」としたほか、フジテレビのように「人権侵害が起きないようなルール作りや研修を実施している」旨の回答があった。

「今後」の具体性に乏しい企業が多い

テレビ東京は、人権デューデリに関する政府のガイドラインなどを参考にしながら、取引先との対話を進めると答えた。

NHKのアンケート回答
NHKは素っ気ない回答(記者撮影)

ただ、自社が解決すべき課題は何であり、それにどう優先順位をつけて進めるのかという具体性には乏しい。その点、スカパーJSATホールディングスの回答には具体性があった。現在の検討状況を示したうえで、期限を区切って人権デューデリを開始したいとの意思が明確だ。

今年度中に事業全体に関する人権方針の策定をするべく検討を進めていると、方向性が書かれている。人権デューデリについても方針を策定後、2024年度以降にリスクの高い取引から開始予定であると回答。優先順位をつけて何から着手するかを説明している。

エンタメ企業に目を転じると、今回質問の送付対象とした企業は総じて対応状況の説明に積極的ではないようにみえる。松竹は「児童への性加害は許されず、あってはならない」とする一方、ジャニーズ事務所への対応状況については回答しなかった。

東宝は、「取引先で起きた性加害を人権問題として捉えるか」という問いも含め、個別質問はいっさい未回答だった。なお、東宝はジャニー氏が演出等を手がけたミュージカル「ジャニーズ・ワールド」を興行するなどしている。

ジャニーズでの性加害問題をここまで拡大させることになった要因は自社にもなかったのか――。そうした視点で人権デューデリを進め、こうした事態を起こさせないようにする「当事者」としての責任が、メディア・エンタメ企業にはあるはずだ。

そしてその問いは、ジャニーズ事務所の取る対策をただ待っていたり、注視していたりするだけのCMスポンサー企業などにも向けられているのではないか。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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