本稿の序盤にて、昨年末、大企業が下請けイジメや優越的地位の濫用のおそれがあるとして、公正取引委員会が固有名詞を挙げたとした。あくまで“おそれ”であり、注意喚起にすぎない。しかし関係者をビビらせるにじゅうぶんだった。
「値上げしませんか」と自ら打診する大企業
前述の調達部長の話に戻る。
「現在では、全仕入先に『値上げしませんか? したかったら教えてください』というレターを出しています。なんだか変な話ですよ。こちらから仕入先に値上げを求めるなんて」
おそらくこの部長が入社した頃は、少しでもコストを抑えるために、仕入先を言いくるめてでも価格を下げろと言われていたはずだ。それが現在では、むしろ買い手のほうから仕入れコストを値上げしてくださいと“請うている”。
「さらに、仕入先が言ってこなかったら優越的地位の濫用といわれる。私は、優越的地位の濫用はいけないと思う。さらに買い手と売り手は平等であるべきだと思う。ただし、値上げは認めなければならないのに、原材料市況が下がったときでも、値下げをする話し合いはできていないんですよ。すべては、値上げを認めろ、値上げを認めろ、という合唱ばかり」
まさに、下請けイジメとイジメられる大企業たち――。
もっとも、これまで下請けに対する圧力がすごかったので、大企業は「下請けイジメとイジメられるくらいがちょうどいい」という意見もあるだろう。しかし、価格を適正化するなら、上げるときは上げる、と同時に、下げるときは下げる、のがいいのではないだろうか。大企業はそのうち、買い手は海外企業に触手を伸ばすかもしれない。それはいいことだろうか。
私(筆者)は零細企業を運営する人間であり、下請けイジメがないと言わない。むしろ下請けイジメはある。それは実感している。しかし同時に、イメージと違う大企業と中小企業間の実態についてもこれから報告していきたいのだ。(次回の記事はこちら:「下請けイジメ」糾弾された大企業のまともな弁解)
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