日本の悪しき文化「下請けイジメ」のヤバい実態 「買いたたき」の定義が拡大、翻弄される大企業

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もっと簡単にいえば、物価上昇で大変な時代なのに、仕入先に納品価格アップの機会を与えてない企業をやり玉に挙げた。それは、公正取引委員会の「(令和4年12月27日)独占禁止法上の『優越的地位の濫用』に関する緊急調査の結果について」に詳しい。

(公正取引委員会ホームページより)

なお、公正取引委員会は、私の記述ほど乱暴ではない。公正取引委員会は「独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない」としている。

しかし、具体的な企業名も発表されたのだから、一般的には挙げられた企業が“悪者”と認識した人たちは少なくないだろう。曲解ではなく、普通ならそう思うはずだ。

そして、私はあえて<仕入先へ「値上げ」を認めていない企業>を公正取引委員会が公表したと書いた。一般的には、「仕入先の値上げを認めずに抑圧しているひどい企業」と思うかもしれない。しかし物事はそれほど単純ではない。

私は固有名詞を挙げられた13社のうち4社ほどにヒアリングをしてみた。さらに、その他、多くの仕入れる側の企業と対話を重ねた。結果に浮かび上がったのは、印象とは違う現実だ。どういうことか。

「仕入先が『値上げさせてください』と言ってこなかったために、従来通りの価格で取引していた。その結果、公正取引委員会に名前を公表されてしまった……」

「少なくとも主要の仕入先ぶんは値上げをしているのに、取引金額が少ない仕入先ぶんの値上げをしていなかったために公表された可能性がある……」

そう認識する企業が、この中には含まれていたのだ。

仕入先に自ら「値上げしませんか」という倒錯

「もうめちゃくちゃですよ」

ある大企業の調達部長が教えてくれた。

「優越的地位の濫用っていわれているけれど、ウチの部員にそんなにひどいやつはいませんよ。むしろ仕入先が『値上げさせてください』と依頼があったら真摯に対応している。でも、『値上げさせてください』と言ってこない仕入先まで配慮はできませんよ。毎日が忙しいのに、そんなことまで気にしてられませんよ」

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