日英伊による次世代戦闘機共同開発「GCAP」の意義 迫られる「防衛装備移転三原則」の見直し

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アメリカとの相互運用性を確保しつつ、日英共同開発への方向転換についてアメリカの理解を得ようとする日本政府の慎重な動きがうかがえる。

日本には、国産を目指したFS-Xがアメリカの政治圧力により、F-16ベースの共同開発を強いられたにもかかわらず、飛行制御等の枢要技術を開示されなかった苦い経験があった。しかし、独自開発と経費膨張等の苦労をしつつもほぼ国産といえるF-2を開発した結果、国内に生産技術基盤が構築され、運用期間を通じて改善・改修を適時行えるようになった。

また、武器輸出三原則のためF-35の国際共同開発に参加できなかった日本は、F-4後継に当初F-22を候補としたが、アメリカ議会は輸出を許可せず断念、F-35をFMSで導入した。

しかし、開発に加わっていない日本は技術へのアクセスができず、頻繁に出される技術改善やソフトウェアの更新に、一方的に追随せざるをえない状況にある。これらの経験を踏まえ、日本はGCAPによる戦闘機の製造・運用に係る自律性の確保と日米の相互運用性の両立に挑んだのである。

昨年12月の日英伊共同首脳声明と同時に、防衛省とアメリカ国防省は、アメリカがGCAPを支持すること、日米が「日本の次期戦闘機を始めとした装備を補完しうる、自律型システムに関する重要な連携を開始した」ことを共同発表した。成熟した日米同盟が両立の枠組みを可能にしたと評価できよう。

GCAPの今後の課題

国際共同開発は参加国の優れた技術を持ち寄り、開発コストや技術リスクを分担・低減できるメリットがあるため、西側諸国では主流となっている。しかし、運用要求の相違や経費分担と製造部位等のワークシェア、知財(IP)の帰属等、各国の思惑と利害が衝突する要因も多い。

実際、フランスはユーロファイター共同開発から離脱し、ラファールの独自国産に成功している。GCAPのライバルともいえる独仏のFCASはスペインが参画したことでワークシェアの合意が崩れたため、開発作業が中断し、運用開始が大幅に遅れる見込みだ。

GCAPは日英伊の政府間および参画する三菱重工、BAE、レオナルド社等の間で協力の座組や製造分担等を交渉中であり、今後の進展を見守る必要がある。

もう一つの重要な課題は開発したGCAPの輸出であり、日本は日本自身の輸出や英伊の輸出(第3国移転)について装備移転三原則との関係を整理しなければならない。

日英伊首脳共同声明には「このプログラムは、まさにその本質として、我々の同盟国やパートナー国を念頭において設計されてきたものである」と記され、輸出が前提となっている。

実際、開発した戦闘機の輸出は、機数増による量産単価の低下や生産・技術基盤の維持だけでなく、輸出先運用国との相互依存関係の深化につながる。日英伊の更新予定機数の合計は約350機だが、潜在的な輸出先はサウジアラビアを筆頭に、数百機の可能性が見積もられている。

独仏のFCASが大幅に遅滞し、アメリカのNGADの輸出が想定されない状況で、英伊がGCAPの輸出にかける期待は大きい。もちろん日本の防衛産業にとっても完成機輸出のメリットは計り知れない。防衛装備移転三原則見直しの政治決断が必要だ。

ロシアや中国は次世代戦闘機をそれぞれ独自開発している。独裁政権は戦闘機の自律性を損なうことを嫌うからだが、ウクライナ戦争でロシアは孤立し、中国も西側諸国の技術規制を受け、両国の独自開発は困難に直面するであろう。国際共同開発は西側先進国の強みであり、中ロ独裁体制に優位するためにも、日英伊は自国の利益や事情に過度に固執せず、GCAPを前進させていく必要がある。

(尾上 定正 シニアフェロー/地経学研究所 国際安全保障秩序グループ・グループ長、元空将)

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