e-fuelは「自動車脱炭素化」の切り札となれるか 安価な水素と大気中からのCO2捕集が不可欠

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エンジン車を重視することでは日本もドイツと同じだ。今回のEUの方針転換は日本にとっても歓迎すべきものだ。特に、日本が得意とするハイブリッド車が2035年以降も販売可能となったことは、ドイツ以上に日本にとってメリットが大きい。

e-fuelの実用化に向け、トヨタをはじめとする自動車メーカー各社や石油元売り大手のENEOS、出光興産などが研究開発に本腰を入れている。国も強力に支援する構えだ。

e-fuel製造コスト比較およびコストの内訳(出所:経済産業省資料)

今年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」では、e-fuelとSAF(サステナブル航空燃料)の製造技術開発、製造設備に今後10年間で1兆円の官民投資を行なう方針だ。また、6月に発表された「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会(中間とりまとめ)」では、従来2040年頃としていたe-fuel商業化の時期を2030年代前半に前倒しすることが明記された。背景には2035年までに間に合わせたいというスケジュール感があると思われる。

実用化には海外との連携が不可欠

e-fuelの早期実用化に向けて、いま日本が取り組むべき施策が3つある。

1つはDACの技術開発をスピードアップすることだ。CCUのリサイクルカーボンから作ったe-fuelではEUの2035年以降のエンジン車に適合しない恐れがあるからだ。

第2に、e-fuelの普及を早めるために、税制優遇などのインセンティブ、あるいはガソリンにe-fuelを一定割合混合することを義務づけるなどの施策を導入することだ。確実な需要が見込まれれば生産規模の拡大が促され、コスト低下が進むことが期待できる。

3つ目は、e-fuelをコストの安い海外で大量に作って日本に輸入するサプライチェーンの構築だ。資源エネルギー庁の試算によれば、e-fuelの製造を原料調達から製造まですべて国内で行う場合、約700円/リットルのコストがかかる。このうち約9割がグリーン水素のコストであり、その内訳は電気分解に使う再エネ電力のコストが大半を占める。海外の水素を輸入し国内でe-fuelを製造するケースは約350円/リットル、すべて海外で製造するケースは約300円/リットルと試算されている。(出所:CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案) 2021年10月) 。

日本は、地形的に太陽光パネルや風車を並べる平坦な土地が少ないことや、気象条件に恵まれていないハンディもあり、再エネ発電コストが高い。e-fuelを低コストで大量に生産するためには、再エネ発電コストの安い国でe-fuel製造プロジェクトを組成し、輸入サプライチェーンを築いていくことが必要となる。

将来的にはDACを使う必要性があると考えられるが、DACは大気中に0.04%しかないCO2を捕集するので、CCUに比べずっと多くのエネルギーを消費する。その意味でも再エネ資源に恵まれた国で製造することが望ましい。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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