「一夜漬けの知識」が記憶に残らない科学的理由 詰め込んだ知識を思い出せなくなるのはなぜか

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この能力を持っている人は、自分の記憶力について「疲弊するし、重荷でしかない」と語っています。

つまり、実際に効率的に脳を使うためには、「正確に物事を暗記するため」に使うことは間違っているのです。

脳を記憶のためだけに使う無意味さについては、あなたも体験したことがあるのではないでしょうか。

試験の前日に一夜漬けで暗記した内容は、試験の翌日には忘れてしまいます。いわゆる「試験前夜の一夜漬け」ですが、わずか一晩という最短期間で試験内容を正確に暗記した点からすると、時間術の究極の成功例ではあります。

しかし、脳のなかに記憶された情報をすぐに忘れ去ってしまうため、まったく役に立たない脳の使い方ともいえます。

時間術に成功しても、自分の脳を無駄遣いしてしまった典型的な例です。

情報はざっくり記憶することが大事であり、それをもとに考察することこそが、脳に本来やってもらうべき働きなのです。

情報は「電気信号」として脳に送り込まれる

では、脳は記憶すべき情報と忘れるべき情報をどうやって判断しているのでしょうか。

それを知るためには、新たな情報をインプットしたときに、脳のなかで何が起きているのかを知らなければなりません。

ウィリアム・ギブソンという作家が書いた『記憶屋ジョニィ』という小説があります。

この『記憶屋ジョニィ』は、キアヌ・リーブス、北野武らが出演し、1995年に「JM」のタイトルで映画化されました。

この作品の主人公は、インプラント型の記憶装置を脳に埋め込まれています。後頭部にある接続端子を通じて、脳のなかの記憶装置に機密情報を直接アップロードして運ぶ「記憶の運び屋」という設定です。

同じ理屈は、1999年公開の映画「マトリックス」においても描かれました。

この「マトリックス」では、人間が端子を通じて巨大なコンピュータに接続され、人々はコンピュータの作り出す仮想現実の中で、日常生活を送っているという設定でした。

「JM」と「マトリックス」では、脳のなかに直接情報が送りこまれるという設定がとてもリアルです。しかも、これらの作品では、情報が接続端子を通じて人間の脳のなかにアップロードされます。

つまり情報は、「電気信号」として脳に送りこまれていることになります。

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