膨張に加速がついて「寂しい宇宙」になる--『観測的宇宙論への招待』を書いた池内了氏(宇宙物理学者、総合研究大学院大学学融合推進センター長)に聞く
小惑星探査機「はやぶさ」の帰還、日本人宇宙飛行士の活躍などを契機に、宇宙への関心が高まっている。「137億歳」と、年齢までわかるようになった宇宙は、どこまで解明さ
れているのか。
──なぜ宇宙は「137億歳」とわかるのですか。
基本的には、ハッブル定数という宇宙の膨張率が正確に決まったことが決定的だった。地上の望遠鏡による観測で、遠くの星までの距離とその遠ざかる速さから、ハッブル定数が決まる。この精度は高い。これに宇宙が平坦であるという完璧な証拠が出て、その二つを組み合わせて年齢が推定できる。
──宇宙を語るとき、46億年や38億年という数字も出てきます。
ビッグバンで宇宙が始まって、その後インフレーションを起こす。銀河系が生まれ、銀河の中で太陽系が誕生し、地球が生まれ、生命が生まれる。太陽系、つまり地球ができたのは隕石分析から46億年前、生命が生まれたのは元素分析から38億年前だといわれている。宇宙が137億歳だから、初めの100億年ぐらいは、少なくとも地球上には生命は生まれていなかった。
地球が生まれ、生命が生まれたというのは、宇宙全体の進化とは直接は関係しない。太陽系のある銀河は、星が約1000個集まって集団となったもの。その銀河内では宇宙の膨張は関係がない。銀河は集団として万有引力でがっちり固まっているからだ。
──宇宙の膨張とは?
宇宙は膨張している。その速度が遅くなりながら膨張していったのが、ある段階から速くなっていることがわかってきた。宇宙観測は、より遠い所を見ればより遠い過去、つまりより昔の状態が見える。逆に、より近くを見ればそれは今に近くなる。見えるとは、そこから出た光が届いたということだ。それにより、昔から現代までどのように変化しているかがある程度わかる。