膨張に加速がついて「寂しい宇宙」になる--『観測的宇宙論への招待』を書いた池内了氏(宇宙物理学者、総合研究大学院大学学融合推進センター長)に聞く
その観測で、速度を比べる数式を作ることができる。原理的にいえば、遠い所から近い所まで、いろいろな銀河の遠ざかる速さを系統的に調べていく。昔のほうはだんだん速度が落ちていくが、より近くのはいやに速度が上がっている。それだけ速さが大きくなっている。
超新星の観測から、どうも宇宙の膨張速度が速くなっているということがわかってきた。
──その速さはどう測るのですか。
ドップラー効果を使う。地球との相対速度の測定ができる。ドップラー効果は距離に比例する。遠くにあるほど速く遠ざかっている。たとえば300万光年離れた銀河は秒速70キロメートルで遠ざかっている。
──宇宙の広がりは無限なのですか。
観測によれば、宇宙は真っすぐ平坦に広がり、果てがない。真っすぐならば無限のかなたまで広がっているはず。そこに理屈があるわけではない。
観測的宇宙論では、結果として無限だったらどういう理屈を考えなければならないか、と考える。観測事実から何が言えるかに絞って説明する。それも一つの観測だけで決めていくのではなく、いくつもの観測を寄せ集めて、結論に至っている。
──その広がりの中には何があるのですか。
われわれの知っているものが4%、ダークマターが24%、残りの72%はダークエネルギーとみられる。われわれの知っているものとは、身体を作っているようなもの。それが宇宙全体でどれくらいあるかは大体わかる。輝いている星の数を数えればいい。輝いている星はわれわれと同じようなものでできている。