膨張に加速がついて「寂しい宇宙」になる--『観測的宇宙論への招待』を書いた池内了氏(宇宙物理学者、総合研究大学院大学学融合推進センター長)に聞く
──アインシュタインの宇宙方程式が宇宙論のベースにあるそうですね。
すべての理論は、アインシュタインの宇宙方程式が通用するものとして組み立てられている。証拠もかなりあるので、大きくは間違っていないとみられている。ただ、変更の余地はあるのかもしれない。
たとえば、ダークマターとダークエネルギーだ。アインシュタインの宇宙方程式にのっとると必要な概念だが、何かの考え違いをしている場合もありうる。ほかの方程式が考えられ、その場合にはダークエネルギーがいらないのかもしれない。これは宇宙に限らないが、鵜呑みにするのではなくて、つねに疑いながら観測するのが大事だ。
--従来、原発や地震についても積極的に発言をされてきました。最後に、東日本大震災について一言。
今回の原発事故に関しては、人災であり、専門家の責任を問うべきだ。長年の研究から、私は反原発・脱原発派であり、地震予知についても不可能と考えている。これからも宇宙についてと同様に、自分の考えを伝えていきたいと思っている。
いけうち・さとる
名古屋大学名誉教授。1944年姫路市生まれ。京都大学理学部卒業。京都大学、北海道大学、東京大学、国立天文台、大阪大学、名古屋大学、早稲田大学などで教鞭を執る。宇宙の進化や銀河の形成などを理論的に研究。科学や技術と社会との関係についても積極的に発言してきた。
(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済2011年4月23日号)
『観測的宇宙論への招待』 日経BP社 2100円 209ページ
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