語られない「台湾有事」ロシアの重要な立ち位置 中国に「引き摺り込まれる」可能性もある

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ロシアは台湾有事に直接関与しなくてもこの利点を享受できる。したがって、ロシア政府が積極的に軍事参加したい理由はない。ロシアと中国は同盟国ではないため、中国本土が攻撃されてもロシアが助ける必要はない。そしてもちろん、ロシア軍はウクライナでの「特別軍事作戦」が続くのと同時にもう1つの戦争に巻き込まれることを望んでいない。

したがって、中国が台湾に侵攻した場合、ロシア政府は傍観し、正式には中立の立場を取るつもりだろう。ロシアはある程度の外交的支持を表明し、国連で中国の侵攻を批判しようとする西側の姿勢に対抗すると思われる。

今の中国と同じ「スタンス」に

プーチン政権は、戦争がアメリカによって引き起こされたという中国のプロパガンダを繰り返すだろう。また、自らを責任ある国際プレーヤーであるというイメージを作るよう試み、中国に有利な場合でも即時停戦を要求するのではないか。言い換えれば、台湾危機に対してロシア政府が取りたい立場は、ウクライナ戦争に対する中国の立場と同様になるにと予想される。

しかし、中国はロシアに対して、はるかに大きな影響力を持っている。ウクライナ侵攻開始後、プーチン政権は中国に対し武器供与などのより直接的な支援を求めていたが、ロシアには中国に政策変更を強制するほどの影響力がなかった。

近年、西側諸国から孤立するロシアは、中国への依存度を着実に高めている。中国はロシアにとって最も重要な経済パートナーである。2022年には中国がロシアの輸出の30%、ロシアの輸入の40%を占めた。第2次世界大戦後はソ連が「兄」の役割を果たしたが、現在、ロシアの立場は中国よりはるかに弱い。

これまで中国政府はロシアを同等の地位の国として扱い、より大きな影響力をあまり行使していない。台湾危機の場合はこれが変わるだろう。たとえロシアが参加したくなくとも、中国は経済的圧力を利用してロシア政府に中国を支援する行動をとらせるだろう。

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