有名な情報通信業の会社で、長く欧米のサプライチェーンを統括する責任者に話を聞いた。
「日本って特殊でしょう。巨大商社がありますよね。欧米ではあまり見られない形態です。もちろん専門商社はあるし、販売を商社に手伝ってもらうケースはあるけれど、なんでも調達を手伝ってくれる商社はあまりない。日本では『商社冬の時代』といわれながら、ずっと生き残っているでしょう。日本企業は商社に頼りすぎっていう側面があるんですね。
日本人は語学ができないから商社に任せたい気持ちがあるのはわかる。商社が20%から30%のマージンを取る。マージンを取っても、面倒なことを代行してくれるから都合がよかったんですね。
でも、それが裏目に出ています。売り手と直接つながることができません。以前、商社経由でアメリカ企業にさんざんお願いしたことがあったんですね。『これは私たちの重要なプロジェクトだから、どうしても大量に仕入れさせてくれ』と。しかし、まったく反応がふるわない。だから直接、アメリカに行ったんですよ。幹部に直談判しました。
そしたら『あ、そうなの? ならすぐに融通するよ』といってくれて(笑)、すぐにモノが入った。さらにびっくりしたのが、『君たちは、日本のなんという商社から仕入れているのか』と訊かれたんですよ。名前を伝えると『知らないな』と。認知すらされていなかった。
「ITツールさえあれば大丈夫」は完全な間違い
日本の商社からの情報がまったく伝わっていませんでした。別に商社が何もやっていないとは思いません。でも彼らからすると、日本の商社は東アジアの一企業にすぎないわけですよ。もちろんトップには情報なんて伝えない。昔はITツールさえあればなんでも大丈夫なんて幻想があったけど、完全に間違いですね。直に会いに行って窮状を説明する、そのためのホットラインは必要です。
外資系はトップ、その人に伝える必要があります。その人です。外資系の日本支社に行ってもどうしようもない。彼らが決められるのは、日本国内のアロケーション(配分比率)だけです。世界のアロケーションを決められるわけではない。だから根本的な数量交渉をしたければ本社に行くしかありません。
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