平気でマグロ食べる人が知らない資源管理の実態 クロマグロ以外は機能していない日本の漁獲枠

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日本も太平洋で漁獲しているクロマグロは、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)で2011年から漁獲制限が開始され、2015年から厳格化されました。TAC(漁獲可能量)が、国ごとに厳格に決まっています。国際的な合意なので、超過はできません。すでに2016年の漁期に一度超過しているので、これ以上の違反は、国際的な信用を失ってしまいます。

政府は、漁獲枠を漁業や県別などに分けて配分しています。沖縄県は、その配分が終わりに近づいたので停止となったわけです。

漁獲枠の移動が漁業者や漁船などでできる仕組みであれば別ですが、そうでなければ当然停止です。クロマグロ漁業で行われている「早獲り競争」は、一部では枠を独自に決めているケースもあるようですが、このやり方は、オリンピック方式と言います。幼魚などの乱獲が進んでしまうため、漁業先進国では数十年前に卒業したやり方です。

漁業者や漁船ごとに割り当てる「個別割当方式」で配分あれば、こんなことにはならないのです。まさに「共有地の悲劇」。個別割当(IQ)方式は、2020年に施行された改正漁業法で定められ、数十年遅れでようやく始まろうとしているところなのです。

東カナダでは300キロを超えるマグロが珍しくない

カナダから輸入されたクロマグロ(写真:筆者提供)

太平洋クロマグロについてはWCPFCの国別漁獲枠方式が効いて、資源量が徐々に回復傾向にあります。

この写真は、カナダの大西洋クロマグロです。東カナダでは、我が国のように、メジマグロと呼ばれるクロマグロの幼魚は漁獲しません。このため、300キロを超えるマグロが漁獲されるのは珍しくないのです。

大西洋では乱獲への反省から、太平洋でのクロマグロ漁より、厳しい漁獲枠の設定が早く、資源回復も進んでいます。日本では比率が低い150~200キロ前後のクロマグロが、普通に漁獲されており、日本にも多く輸出されています。

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