平気でマグロ食べる人が知らない資源管理の実態 クロマグロ以外は機能していない日本の漁獲枠

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漁業先進国では、クロマグロだけでなく、サバ、ニシン、マダラ、ズワイガニ他、科学的根拠に基づく資源管理で、大半の資源がサステナブルです。そのお陰で、漁業・水産業は成長産業なのです。

大きすぎて資源管理が機能していない日本の漁獲枠

上の表は、直近のTACと漁獲実績をまとめたものです。サバ、マイワシ、スケトウダラ、ズワイガニでは、魚種ごとにひとまとめではなく、ようやく系統群ごとに分けられ始めました。系統の違いは別々の資源であることを意味します。

しかしながら、大きな問題があります。それはクロマグロを除く各魚種の漁獲枠が、大きすぎることにあります。これでは肝心の資源管理が機能しません。単純平均では、消化率は52%と非常に低くなっています。日本が多く輸入している、ノルウェーサバやアラスカのスケトウダラなどでは、漁獲枠の消化率は、ほぼ毎年100%です。ほぼ100%になるのは、実際に漁獲できる数量よりも、漁獲枠が大幅に少なく設定されているからです。

実際に獲れる魚が、配分された漁獲枠より小さければ、漁業者は少しでも大きい魚を、価値が高い時期に漁獲しようとします。

例えば上の表の最初にあるサバ(太平洋系群)の消化率は、47%と非常に低くなっています。この状況では、漁船はサイズや時期に関係なく一尾でも多く獲ることを考えざるをえません。

サンマやスルメイカも50%を切っています。供給が少ないために価格が上がると、少しでもたくさん獲ろうと、一網打尽や根こそぎ漁業が進んでしまいます。ちなみにノルウェーでは、サバやニシンを一網打尽にする巻き網漁業が中心ですが、漁獲枠が機能しているので、資源はサステナブルです。

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