「ビームス」創業から47年"らしさ"継承への難題 設楽洋社長は「3年後75歳」で会社を譲ることを決断

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では、そういう反対派の意見を、設楽さんはどうやって賛成に持っていくのか。「強引に押しつけるのはよくないと思っていて、相手の心が少し動くような理由を見つけ、そのためにやろうという方向に持っていくようにしています」。

例えば、地方に店を出す時は、「店が増えると、商品のバリエーションも量も増えるから、今まで以上に仕入れたいもの、作りたいものをかたちにすることができる」という話をして理解してもらった。やってみると“ビームスらしさ”を表現できるし、通用することがわかってもらえるのだという。

全社員の“自宅”に送った冊子

こういった“らしさ”は、ノウハウとして継承できるものではない。そのあたりを設楽さんはどう考えているのだろうか。「7年ほど前に、『ネクストビームス』という冊子を作り、全社員の自宅に送ったことがあります」。ビームスのDNAを踏まえながら、未来に向けて進む方向について、言葉とビジュアルで表現したのだ。

全社員の自宅に送ったという『ネクストビームス』(撮影:尾形文繁)

ページを繰っていくと、言葉とビジュアルが一体となり、心身に伝わってくる――「それなりの規模の会社になり、思いがダイレクトに伝わりにくくなっている。だから全社員の自宅に、社長としての僕の思いを直に届ける、そんなやり方もありと思ったのです」。社長の名前で自宅に冊子が届いたら「何だろう?」と目を通す。メッセージが体温をともなって伝わるに違いない。

「あの時とやり方は変えますが、次世代に継承するにあたり、ビームスが何を残し、何を変えていいかというところを、今、整理しつつあります。いずれこれを、何らかのかたちにして伝えようと考えています」(設楽さん)

『ネクストビームス』は、ビームスのDNAを踏まえながら、未来に向けて進む方向について、言葉とビジュアルで表現している(撮影:尾形文繁)

コロナ禍は、アパレル業界に大きな爪痕を残した。半年というサイクルの中で大量にものを作り、売れ残ったら長期にわたってセールにかける。残ったものは、最終的に廃棄する、という業界全体として回していたシステムに対し、厳しい評価を受けるようになったのだ。

「『このままではいけない』と業界が薄々気づいていたことを、抜本的に見直す機会になりました。うちは仕入れの精度を上げ、セール時期を遅らせ、かつ短くしつつ、話題性のあるプロパー商品を同時期に投入するなどして、売上は落ちたものの利益が上がり、過去最高益を出すことができたのです」(設楽さん)

適量を生産し、正価で価値を感じる人に届けて売り切る。本質的なビジネスを徹底していくことが、結果的に利益に結びつく。今後もそこを追求していくという。

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