率いているのは、代表取締役社長を務める設楽洋さん。筆者がご縁を得たのは、1980年代の終わりのこと。スタートして10年あまりのビームスについて、未来に向けた夢を紡ぐ話に惹き込まれた。時代の先を読み、新しいことに挑戦していくのを心から楽しんでいる――折に触れ、話をうかがってきたのだ。
アパレルを取り巻く環境は、決して穏やかではない。半年ごとのトレンドにもとづき、生産から消費までのサイクルを回してきた業界のありよう、少子高齢化の中、大型商業施設に居並んでいる過剰とも言えるリアル店舗など、時代がターニングポイントを迎える中、解決・改革していかなければならない課題が山積している。
設楽さんは、これからのアパレル業界をどうとらえているのか、“ビームスらしさ”とは何なのか、どう伸ばしていこうとしているのか、諸々の話を聞いた。
服を売るのではなく、「ハッピー」を売る
「ビームスはそもそも、服を売るのではなく、『ハッピー』を売ることを標榜している会社です」と設楽さん。1976年の創業時から、その考えがブレるところはない。なぜ「ハッピー」なのかと聞いたところ、「ハッピーでいることが大好きだからです(笑)」と返ってきた。
幼い頃から、明るいことや楽しいことに強く惹かれてきた。仕事を通じ、ハッピーを多くの人に伝えたい、味わってもらいたいと思ってきた。創業の精神ともいえる考えを、21世紀に入った時、「Happy Life Solution Company」と文言化して企業理念に据えた。
“らしさ”としての「ハッピー」を標榜して50年弱。創業メンバーである設楽さんは、この精神を次世代にどう伝えようとしているのか、代替わりについて聞いてみたら、「75歳で次の社長に譲ろうと決めています」ときっぱり。
「スタッフたちには定年があるのに、社長に定年がないのはおかしいと思い、3年ほど前に社長定年をもうけたのです。僕が75歳になる3年後は、ちょうどビームスが50周年と切りもいいので(笑)」
誰を次期社長にするのかをもう決めているのだろうか。「候補者はいますが、いろいろな観点から、もう少し見定める必要があるかと考えています」と慎重な答えが返ってきた。
アパレル業界では、戦後の高度経済成長期に産声を上げた企業が多く、創業者が社長を務めているところが少なくない。誰にどう未来を委ねるのか、“らしさ”をどう受け継いでいくのかは大きな課題でもある。
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