アメリカの景気は、本当に夏から持ち直すか 楽観的なFRBは年内利上げを示唆

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4月29日には全米リアルター協会(NAR)が、中古住宅販売成約は3月に1.1%増加したと報告した。その指数は2013年6月以来の高水準にある。住宅市場は向こう数カ月間堅調だろうと見なす専門家たちもいる。FRBに利上げを急ぐ気配がないからだ。

しかしRBS証券の米国担当エコノミスト、ガイ・バーガーは昨年第4四半期に見られた逆風の一部はすぐには静まらないだろうと警告した。エネルギー関連の支出減はいずれ落ち着くだろうが、ある程度の期間が必要だというのだ。そしてユーロなど他通貨に対するドル高が続き、輸出企業は決して安心できない。「ドル高が進んだため、回復規模が抑えられるかもしれない」とバーガーは言う。

9月のFOMC会合まで待つだろうという専門家が多数

以前はFRBが6月にも動くかもしれないという予測があったが、今や多くのエコノミストが9月のFOMC会合まで待つだろうと見る。もっと後かもしれないともいう。最新データで「先送り説が強化される」とアンダーソンは言った。

だが金融市場では先送りの可能性が誇張されているかもしれない。ブルームバーグの試算によると、現在のFFレート先物では9月末までに利上げを開始する可能性を26%だけ織り込んでいる。年内という可能性も52%にすぎない。対照的に先月はFOMC参加者17人のうち15人が年内の利上げ開始を予測していた。オサリバンによるとFRBも様子見の構えでいる。

「第1四半期GDPの弱さについて彼らは割引して考えているが、“正常化”に着手する前に、底堅い回復基調と失業率の低下継続の証拠をもっと見ておきたいだろう」とオサリバンは言う。「彼らは急いでいない。私たちは引き続き9月に引き締め開始と予想している」。

なぜ多くのアナリストが9月のFOMC会合に注目するかというと、その後にイエレンFRB議長が四半期ごとの定例記者会見を実施する。かねてからFRBはそういう場で重大な政策変更を発表する傾向があった。ただしイエレンは前回3月の定例記者会見で、7月や10月の会合でも行動に踏み切る可能性があると述べていた。そういうタイミングなら会合後に議長が質問を受ける予定はない。

FRBはこのポイントを強調するかたちで4月29日午後、報道陣を招いて試験的に電話会議形式の記者会見を体験させた。これならイエレン議長が急に記者団と話すことができるというものだ。実施されたら必ず放送もされるという。

(執筆: Binyamin Appelbaum記者、Nelson D. Schwartz記者、翻訳: 石川眞弓)

© 2015 New York Times News Service

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