韓国は2022年にポーランドと戦車980両、自走砲648両、戦闘機48機、多連装ロケット288門など、総額2兆円超の取引を成立させた。韓国製兵器は価格と納期で競争力があり、対象国の要求に柔軟に応じるカスタマイズ能力が高いとされる。
欧米製兵器との親和性も高く質も保証されたジェネリック的な位置付けで、国際兵器市場のシェア拡大が見込まれている。実際、SIPRIによると2017~2021年の5年間の兵器輸出はその前の5年間から2.8倍に増え、兵器輸出での国別順位は世界14位から8位に上昇した。
さらに民生用の新興技術を含めれば、国際的な技術協力のスコープは大きく広がる。日本政府も防衛装備移転三原則が採択されて以降、アメリカとの関係に加えて、英国、イタリア、フランス、イスラエル、オーストラリア、インドなどとの協力を深めている。
とりわけ無人化システム、ロボティクス、指向性エネルギー、人工知能、宇宙、サイバーといった分野において、民生技術のスピンオンを狙う国際技術協力の地平線はかつてなく広がっている。
日本に求められる総合戦略
こうした防衛装備・技術協力に関する新しい潮流の中で、日本自身が望ましい安全保障秩序の構築に積極的に踏み出す戦略が必要だ。
これまで主力装備の共同開発のほぼすべてをアメリカに依存してきた日本が、航空自衛隊・F-2戦闘機の後継としての次期戦闘機を、日本・英国・イタリアと3カ国で共同開発すると決定したことは、アメリカ国防産業との一方的な依存関係の脱却と、日本自身の自律性の確保の双方から意義を認めることができる。
もっとも、中国の軍事的台頭によって厳しさの増す安全保障環境と、米中間の先端技術の防衛装備への実装をめぐる競争が熾烈になるなかで、日米両国が装備・技術面での協力を深化させ、日米同盟の技術的優位性を確保することは喫緊の課題といえる。
新興技術開発と装備実装化で対中優位性を確保しつつ、こうした装備・技術を同志国と共有し、さらには新興国とのパートナー関係の構築(特定国への依存を脱却する支援を含む)や、途上国の能力構築支援などに結びつける総合戦略こそが求められている。
(神保謙/慶應義塾大学総合政策学部教授、国際文化会館常務理事、APIプレジデント)
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