BTSの軌跡辿った初のオフィシャルブックの中身 『BEYOND THE STORY』の冒頭に書かれていること
ソウル市江南区島山大路(トサンデロ)16キル13-20。江南、あるいは新沙駅の交差点を通るのが初めての人にとって、チョングビルディングを見つけるのは簡単ではない。スマートフォンの地図アプリで確認すると、このビルは新沙駅の1番出口から568メートルと表示される。
しかし、地図アプリを見るだけでは、チョングビルディングが急な坂を上りきったあたりにあるという事実はわからない。険しい道を上ったあと、細い路地を何度も曲がらなければたどり着かないということも。車でカーナビを使って訪れない限り、迷ってしまう可能性がある。
ーー孤独で、どことなく不安でした。
彼にとってはすべて初めてのことだった
チョン・ホソク。3年後に、BTS/ビーティーエスのJ-HOPE/ジェイホープとしてデビューする彼も、同じだった。2010年4月、Big Hit Entertainmentの練習生として契約を結び、故郷の光州(クァンジュ)で委託教育を受けていた彼は、「チョングビルディングの近くにある練習生宿舎に入居するように」と連絡を受け、ソウルへやってきた。
2010年12月24日のことだった。
ーーすごく怖かったのです。クリスマスイブだから、街を歩く人はみんな楽しそうなのに、僕だけ落ち着かなくて。
ソウルで地下鉄に乗るのも、クリスマスイブの新沙駅の風景も、彼にとってはすべて初めてだった。ソウルでも人通りが多いエリアで、混雑した地下鉄や新沙駅の周りの見慣れない景色以上にJ-HOPEがとまどったのは、事務所の場所が分かりにくいことだった。
ーー「ああ、どうしよう!」と、新人開発チーム課長に連絡しました。
「僕、どうやって行けばいいですか?」
スタッフとの電話を終えたJ-HOPEは、彼の表現によれば「ずーっと、どうしよう、どうしようって言いながら」、焦りつつ宿舎に到着したという。前日からわくわくしながら期待していた、だからこそ10年経った今も生き生きと記憶がよみがえる最初の宿舎。ただ、J-HOPEが足を踏み入れた瞬間に目にした光景は、彼の想像とは大きく異なっていた。
ーー下着姿のSUGA/シュガさんがいました(笑)。キッチンのシンクには食べ残したチョッパル(豚足)があって、洗濯物などが床に散らばっていて。みんな下着姿で歩き回っていて。「あれ、宿舎ってこんなところなのかな?」って思いました。