搾取に怒り「ハリウッドスト」泥沼化で起きる事態 Netflixの台頭、AI進化で組合員の生活は困窮へ
俳優と脚本家の組合は、こういった現状を反映した、まったく新しい契約内容を要求している。その一つとして、配信会社が会員から徴収する会費の2%をレジデュアルに当て、作品の人気度に応じて出演者に配分するという新ルールを提案した。
しかし、製作者協会はまるで取り合わない。俳優組合と製作者協会の間で決められている俳優の最低賃金も、インフレを考慮し、初年度は現在の15%増し、2年目と3年目はそこからさらに4%増しにすることを俳優組合は要求したが、製作者協会は5%、4%、3.5%を主張。交渉の中で、俳優組合は、 初年度を11%まで落とすと妥協したが、製作者協会は方針を曲げなかった。俳優組合の交渉を率いるリーダーたちは「それだと物価の上昇についていけない」と憤慨する。
そんな俳優組合に、製作者協会はまるで共感しない。それどころか、彼らの要求を「非現実的」「法外」と受け止めている。ディズニーのCEOボブ・アイガーは、「まだコロナのダメージからも立ち直れていないのに。今は新たなダメージを起こすのに最悪の時」と、彼らへ不満をもらした。
製作者協会は、自分たちが出したオファーを非常に寛大だと本気で思っているのだ。そんな製作者協会について、俳優組合のプレジデント、フラン・ドレッシャーは、「感覚が完全にずれている」と一蹴する。たしかに、今、配信会社はどこも、収益を出すプレッシャーを抱え、社員をレイオフしたり、ラインナップの見直しをしたりして経費を削減している。
だが、そんな中でもCEOらは巨額の報酬を手にしている。それはキープしつつ、富を生み出しているのに、貢献した俳優や脚本家を安く使いたがる彼らは、自分たちを搾取しているのだと俳優たちは見る。
AIの進化で収入が減少も?
AIの問題もある。製作者協会は「俳優本人の許可を必要とする画期的な内容のオファーをした」と主張するが、俳優組合のトップは、彼らは1日のギャラでエキストラを雇ってスキャンし、永遠にそれを所有し、使用し続けるつもりだという衝撃的な事実を組合員に明かした。
ワーキングクラスの俳優にとって、エキストラは大事な仕事だ。俳優組合に入っていなくてもエキストラとして働くことはできるが、一定の割合は組合員を雇わなければいけないうえ、ギャラも組合員は非組合員より高い。その部分を削減するための策なのかもしれないが、そうなると俳優たちはますます生活が成り立たなくなる。
現在、ロサンゼルスでは、ホテルの従業員たちも、より良い待遇を求めてストライキを行っている。また、最近は、スターバックスやスーパーマーケットチェーンのトレーダー・ジョーズでも組合を結成する動きが見られる。上層部だけが儲かり、現場に不公平な状況を押し付けるシステムに、業界を越えて労働者が立ち上がっているのだ。俳優と脚本家は、そんな風潮にも勇気づけられていると思われる。
ストライキの初日、フォックス・スタジオの前でデモに参加した女優のアリソン・ストーヴァーさんは、「誰もストライキなんかしたくない。でも、しないではいられない状況にいる。私たちが求めているのは、生活できるだけの収入」と語った。それは果たして「非現実的」で「法外な要求」なのか。スタジオと配信会社がそう考え続けるかぎり、このストは終わらない。
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