最低賃金「1000円到達」次の目標は7年後に1370円 日本も世界標準「50%・60%ルール」を導入せよ
このように、中央値に対する最低賃金の比率を5年先までに達成する目標として明示するのには、意味があります。中央値に対する比率を目標にすることで、5年先までの最低賃金の予測を立てられるようになるので、この目標をクリアするべく、経営者に対して経営戦略の練り直しを暗に促すことができるのです。
景気が好転し賃金が上昇すると、最低賃金の目標値も上がりますが、逆に景気が悪化すると目標値も下がりますので、労使のどちらかに負担が偏ることもありません。
岸田政権も1000円の最低賃金目標を達成した後には、「50%・60%ルール」の導入を真剣に検討するべきです。
ちなみに、そのルールに沿って計算をすると、日本の最低賃金の次の目標は「2030年までに1372円」となります。
国税庁のデータによると、日本の平均年収は443万円なので、平均労働時間を1607時間(OECD)で割って、50%をかけると、最低賃金は1378円となります。中央値は366万円ですから、1607時間で割り、60%をかけると、1367円となります。
その2つを平均すると、1372円となるのです。
残念ながら、日本の統計の整備はあまりにも遅れているので、計算に用いた数値は精査する必要がありますが、諸外国との比較してみても、大まかには合っていると感じます。
これを2030年までの目標とした場合、今後の最低賃金の引き上げ率は「毎年4.6%」となります。インフレ率を考慮し、毎年修正するべきであることは言うまでもありません。
最低賃金は「福祉」ではなく「経済政策」
最低賃金はしばしば福祉政策の一環と見なされがちで、商工会議所をはじめとする反対派の主張にも、その影響が色濃く見られます。
確かに、最低賃金が導入された大昔は、その役割が大きかったのかもしれません。しかし、時を経て最低賃金にまつわる状況も大きく変わってしまったので、役割も変更してしかるべきです。
最低賃金が導入されたとき、日本では人口が大きく増加していました。国の経済成長は人口の増加と賃金の上昇という、2つの要素から成り立っています。人口が大きく増加している時代なら、賃金を上げなくても、経済は成長できます。そんな時代では、最低賃金は福祉の面が相対的に強かったかと思います。
しかし、現在のような人口減少の時代では、賃金が上がらないと、経済は成長しません。賃金政策は経済政策の中核をなすべきで、福祉政策の一環にとどめるべきではないのです。
岸田政権にとって、政府が経済成長を促進し、国民の生活を向上させるためには、賃金政策が最も重要な役割を果たしています。しかも、日本では今後数十年にわたって人口が減少するので、賃金政策が日本に残された数少ない経済政策の中心とならざるを得ないのです。
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