最低賃金「1000円到達」次の目標は7年後に1370円 日本も世界標準「50%・60%ルール」を導入せよ

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地方と都心の最低賃金の差が大きくなるほど、地方の人口減少が進むと分析されているので、人口バランスの観点からも、地方と都心の最低賃金の差は、さらに縮小させる必要があると考えています。

「50% - 60%ルール」という世界標準

さて、めでたく1000円の最低賃金が達成されたとしても、手放しで喜んではいられません。そもそも日本の最低賃金の水準は国際的に見て、異常とも言えるほど低かったので、それがようやく正常化しつつあるだけです。最低賃金1000円が達成された後についても、今からキチンと考えておく必要があります。

世界的には、最低賃金の設定は独立機関を設け、経済学者や統計学者を中心にビッグデータを活用し、企業の統計を徹底的に分析したうえで、商工会議所などの意見を聞くなど、多角的なエビデンスに基づいた提言が行われるのが一般的です。その提言を政府に提出し、最終的な決定を首相など国のリーダーが行います。

しかし、日本はいまだに中央最低賃金審議会で、厚生労働省のホームページに「最低賃金は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会において議論の上、都道府県労働局長が決定しています」とあるように、経営者と労働者がぶつかり合い、声の大きいほうの主張が通って決定されているという印象を受けます。明らかにエビデンスに欠ける古いやり方で、先進的な手法とはかけ離れています。

そもそも1000円という最低賃金の目標も、経済学的な根拠に基づくものではないので、これが達成されたからといって十分ではないのです。

最低賃金を決める際に世界的に使われている基準があります。それが「50%・60%ルール」です。このルールでは、最低賃金は所得の全国平均に対して50%、所得の中央値に対して60%という割合になるべきだとされています。

OECDが発表した2021年の38カ国のデータでは、最低賃金を導入している30カ国における最低賃金の中央値に対する単純平均は、2015年の48%から55%まで上昇しています。

この基準で見ると、日本は30カ国の中で22位に位置しています。

「50%・60%ルール」は、次第に世界の標準となりつつあります。

2022年9月、EU議会ではこのルールを明確に規定した法律が可決されました。

イギリスではブレア政権の後に誕生したキャメロン政権下の2015年に、最低賃金の大幅な引き上げが行われました。その際、2020年までに、中央値に対して60%の最低賃金を目指すと宣言し、2020年にその目標は達成されました。

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