LTV(顧客生涯価値)は企業・顧客の両視点が必要 「ゴールド会員」なんて顧客はうれしくはない
米コンサルティング大手ベイン・アンド・カンパニーのフレデリック・F・ライクヘルド氏が提唱した、有名な「1対5の法則」によると、新規顧客に商品を販売するには、既存顧客に販売する場合の5倍のコストがかかるといわれています。日本国内の人口が減少し続ける中、新規顧客に「1回で十分」と思われてしまうような”焼き畑ビジネス”に未来はありません。せっかく新規顧客を獲得できたならば、2回目、3回目……10回目と、できるだけ長くお付き合いしたいものです。
そのためには長期間にわたる優れた顧客体験が必要になります。その成果は、総売り上げや総利益だけでは見えてこないため、一人ひとりのお客さまとの関係性の深さを測るLTVで見る必要があるのです。逆に言えば、1人の顧客が生み出す利益が2倍に増えるなら、その顧客の初期獲得コストを倍増させてもよいはずです。LTVを向上できるならば、選択できるマーケティング施策の幅も広がります。
LTVは購入頻度の低い商品でも意識すべき
LTVに対して、定額課金のサブスクリプションサービス(サブスク)だけが気にすべき指標だと思われている方がいるかもしれません。しかしそんなことは決してありません。
例えば、一生に数回しか買わない「家具」であってもLTVを意識すべきです。家具は「引っ越し」「家族構成の変化」「今の家具の劣化」などをきっかけに検討を開始し、最初に思い付いた店舗に足を運びます。多くの人は、家具店といえば「IKEA」や「ニトリ」「無印良品」などを最初に思い浮かべますが、この最初に思い浮かべる候補群に入ることができれば、購入される確率が非常に高くなります。
最初に思い浮かべる候補群に入るには、家具を検討し始める前からの継続接触が欠かせません。例えば、テレビCMの出稿、人通りの多いショッピングモールへの出店、家具以外の日用品の販売などで、潜在顧客との接点をつくらなければなりません。顧客が家具を買うタイミングがいつかは分からないため、企業側は長期的なコミュニケーションを取らざるを得ないのです。
また一度家具を買ってもらった後、そのままお客さまと疎遠になるのは非常にもったいないことです。家具は個人が購入するものの中でもかなり高額な部類に入るため、それを買うと意思決定しただけでも顧客ロイヤルティーは非常に高い状態にあります。先に購入した家具と併用しやすい別の家具やファブリックを提案することはもちろん、日用品やアパレルなど高頻度で購入する高粗利の商品も売れるはずです。
さまざまな商品を取り扱っている、ある総合小売店のデータを分析したところ、家具を買った顧客にはさまざまな商品をアップセルできており、最もLTVの高い顧客群だったという事例もあります。
LTVというテーマは、業界問わず全ての企業が向き合うべきものなのです。
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