「運動会を嫌がる子」に隠された"深刻すぎる原因" "神経質な子"ではなく"感覚過敏"かもしれない
現在、「感覚過敏研究所」を主宰する加藤路瑛さんが不登校気味となり、中学2年生の秋からフリースクールに通うようになったのも、大きな原因の1つは、この感覚過敏だった。
中学に入学し、学校生活にも慣れてきた頃、保健室に駆け込むことが増えた。休み時間になると、決まって頭痛がする。保健室の先生にきっかけを問われたとき、思いついたのが「クラスのみんなの賑やかな会話」「甲高い笑い声」だったという。それを聞いた先生は、「それって感覚過敏かもしれない」と話した。
感覚過敏とは感覚特性の1つで、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの感覚が過敏になり、日常生活に困難を抱える状態のこと。「ああ、私は感覚過敏なんだ」……そう自覚した加藤さんは、小さい頃から感じていた違和感、そして、身体にまとわりついていた目に見えない重さから解放されたという。「私が弱いわけではなかったんだ」と、安心できた。
加藤さんは、先ほどのAさんの息子の“聴覚過敏”について、こう解説している。
「感覚過敏のある人は、学校行事などいつもと違う状況では人一倍ストレスを感じ、疲れてしまうことがあります。運動会はさまざまな強い刺激に満ちており、感覚過敏の人にとってはつらい状況です。周囲の応援の声、スピーカーから流れる音楽やアナウンス、そしてとりわけ徒競走のピストルの破裂音は、聴覚を激しく刺激します」
運動会で実力を発揮できない「感覚鈍麻」
これら感覚過敏がある一方で、寒さや痛みを感じにくい「感覚鈍麻」という“生きづらさ”についても同様に知ってほしいと、加藤さんは話す。感覚鈍麻のある人は、痛みや寒さ、暑さ、空腹などを感じにくく、人や物との距離を把握するのが苦手。そのため、知らないうちに身体にアザができていたり、季節に合わない服装をしていたりすることがあるそうだ。
この感覚鈍麻がある場合、同じ運動会でも「耳ではピストル音をとらえているのにスタートが遅れてしまう」などの困り事がみられることも……。これは、私たちが身体の五感を通して絶え間なく受けている多くの刺激を整理・統合して計画を立てる脳の働き「感覚の統合」がうまくいっていない可能性が原因ではないかと考えられている。