旧車を冷遇する日本と優遇するアメリカの差 ヒストリカル・ビークル・ライセンスってなに

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CR-X
ショーの展示用としてフロントに日本のナンバープレートのコピー商品を付けている1990年式のホンダCR-X。日本から輸入した右ハンドル車で、貴重な無限製のホイールをブラックに塗装して装着している(写真:平野 陽)
CR-X
リヤにまわってみるとアリゾナ州のヒストリック・ビークル・プレートを装着していることが判明。アリゾナ州の場合は、車齢25年以上が条件で、年間更新料は10ドルとなる(写真:平野 陽)
アリゾナ州ヒストリック・ビークル・プレート
アリゾナの砂漠を表現したのだろうか、サンドベージュっぽいプレートに赤い文字で“HISTORIC VEHICLE”と“GRAND CANYON STATE”と書かれているのがかっこいい!(写真:平野 陽)

転じて我が国はというと、排気量をベースに年額が決まる自動車税は、ガソリン車は車齢13年、ディーゼル車は車齢11年を超えると、概ね15%の重課となり、古いクルマが優遇されるどころか冷遇されているのが現実だ。車検時に支払う重量税も同じく13年超と18年超のタイミングで高くなるので、負担は年々増すばかりである。

高い維持費に耐えかねたユーザーは、一時抹消登録を行うか、売却したり廃車にしたりといった選択に迫られがち。その結果、時を経て文化財としての価値を持つようになったクルマたちは、いずれスクラップにされるのを待つか、より購買力に富んだ海外市場へ流れていくしかなくなってしまう。

文化や歴史な価値を尊重するアメリカの自動車登録制度

CR-X
ほぼノーマルの状態がキープされた1990年式のホンダCR-X。カリフォルニア州のイベントで見かけることはかなり珍しい、東海岸のバーモント州のアンティーク・ナンバーを取得していた(写真:平野 陽)
バーモント州アンティーク・ビークル
バーモント州の場合は「アンティーク・ビークル」という名称を使用し、車齢25年以上が対象。1年の登録料は23ドルとなっている。展示会、クラブ活動、パレード、その他公共の利益を目的とする行事で使用するために維持されている車両に限定されるが、許可される使用として「週1日以下の旅客または財産の臨時輸送」も認められている(写真:平野 陽)

 

実際に日本で旧車を我慢強く所有している人の多くは、たまにイベントに参加したり、仲間とツーリングに出かけたりするときにだけ使用していることだろう。そうした用途に限定されても構わないので、税の減免や控除といった優遇が得られる特例ナンバーというものが日本にも存在すれば、きっと利用したいと考える人は多いに違いない。

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歴史的なクルマを価値ある文化財と捉えるのか、使い捨ての古びた道具と捉えるのか。アメリカで開催されているJCCSに参加し、クラシックカーとしての日本車の魅力が海外でこそ高く評価されている現実を見るたび、今問われているのは日本人が自国の文化財としての旧車に対する誇りを再認識し、保護していくことではないのかと感じさせられる。

小林秀雄 ライター

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こばやしひでお / Hideo Kobayashi

自動車専門誌の編集プロダクション勤務を経て、ライターとして独立。主に自動車雑誌やWebサイトで記事を執筆している。

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