旧車を冷遇する日本と優遇するアメリカの差 ヒストリカル・ビークル・ライセンスってなに

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CR-X
JCCSの会場で見かけたヒストリカル・ビークル・ライセンスは、さすがは地元ということで、カリフォルニア州のものが最多。この1988年式のホンダ「CR-X」は無限製のパーツを使用したさまざまなカスタマイズが施されているが、カリフォルニア州の場合はカスタマイズの有無は登録の認定条件に含まれていない(写真:平野 陽)
CR-Xのヒストリカル・ライセンス
このクルマを含め、なぜかCR-Xのヒストリカル・ビークル・ライセンスの取得率が高かったのだが、登録条件の使用用途のひとつにクラブ活動が挙げられているので、同じ車種を愛好するクラブのメンバー同士でタイミングを合わせて取得すると、何かと動きやすいという現実もあるのかもしれない(写真:平野 陽)

JCCSの開催地であるカリフォルニア州を例にとると、ヒストリカル・ビークルとして登録できる車両の条件は、1922年以降に製造された車齢25年以上の歴史的に興味深いモデル、と規定されている。ちなみに1922年より古いモデルには、「馬なし馬車」として登録する同様の特例が用意されていたりもする。

カリフォルニア州では、クルマを新規で購入した際と、1年に1度、登録を更新する際にVLF(Vehicle License Fees)という登録料を支払う必要がある。VLFはクルマの市場価値(新車時販売価格もしくは現在の所有者に譲渡されたときに支払われた費用)をもとに算出され、その0.65%もしくは1.15%の費用を支払うことになっている。減価償却されるので、更新のたびに年々減額されるのも特徴だ。

だが、ヒストリカル・ビークルとして登録をすると、VLFは年間たったの2ドルで済み、オーナーは維持費を大きく節約することが可能となるのだ。ただし、クルマの使用用途はショーでの展示やオーナーズ・クラブでの活動、そのほかの類似した非商業的な目的における移動に限定され、日常的に走ることはできなくなってしまう。

排ガス検査などの項目についても一部省略

CR-X
こちらの初代CR-X(日本名はバラードスポーツCR-X)は、中西部にあるミシガン州のヒストリカル・ライセンス・プレートを装着。かつてカリフォルニアのコスタメサに実在したストラーマンというコーチビルダーで製作された、希少なコンバーチブルモデルだ(写真:平野 陽)
CR-X
アメリカにおける自動車産業発祥の地とも言われるミシガン州だけあり、州内にはアンティーク車両のオーナーが多く、安価に車両を維持できるヒストリカル・プレートの制度は1956年からスタートした(写真:平野 陽)
ミシガン州ヒストリカル・ライセンス・プレート
ミシガン州では車齢26年以上、コレクターズアイテムとしてのみ所有され、ヒストリッククラブ活動、パレード、カーショーなどのイベントでのみ使用されることが登録の条件。白地のプレートに6桁の青い数字が並ぶのが特徴だ(写真:平野 陽)

ちなみにスモッグ・チェックと呼ばれる、2年に1度の排ガス検査に関しては、もともと1975年モデルより古いクルマは、そもそも検査を受ける必要がない。1976年モデル以降の場合はチェックが必要だが、ヒストリカル・ビークルとして登録すると検査項目が通常よりも省略されることになっている。

VLFは1年に1度払うという意味では日本の自動車税と似ているが、大きな違いは算出のベースが市場価値に置かれているところだろう。古くても高額で売買される人気の旧車ほどVLFも高くなるので、「使用用途は限られてもいいからナンバーを切らしたくない」と考えるユーザーにとっては、ヒストリカル・ビークル・ライセンスがひとつの選択肢になるわけだ。

であれば、それこそJCCSに参加している旧車などは、みなこぞってヒストリカル・ビークル・ライセンスを付けていてもおかしくなさそうなものだが、そうはなっていないのは、やはり日常的に乗れなくなるのは困るという人の方が多数派だからなのだろう。そもそも税率もそこまで高くないので、よほどの高額車両でない限りは更新料も大きな負担とは感じないのかもしれない。

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