再開発で移転「Bunkamura」映画館の新たな挑戦 7月には初の配給作品「大いなる自由」も上映

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野口:ただ大変だけどできないことではないというか、わたしはもともと配給会社で映画の買い付けをやっていた経験があるので。ブランクがあるけれども、契約ってこうだったよなというのはありましたし。浅倉は浅倉で「APARTMENT」で字幕制作を経験していました。

もちろん配給会社さんと一緒にやっていくというのが基本ではありますが、時には自分たちが本当に見てほしい映画を打ち出してもいいんじゃないか、と覚悟して決めました。

――ただ実際の作業はかなり大変だったのでは?

野口:特に今回は劇場を移転しなきゃいけないというのと、オープニングで特集を2つ組んでいるのと、そして『大いなる自由』の配給とで、われわれもかなり限界を超えていましたけど、でもやっぱりいい映画だから。大変でもやってよかったと思っていますね。

浅倉:やはりそう思わせる作品だったというのが大きくて。時代的には昔の話であっても、今作られる意味はあるし、今見られる意味がある。これが見過ごされないようにしなければ、というのが原動力になりました。

野口:今回、やろうと思えば、自分たちが届けたい映画を届けられるという、いい試金石になったので。今はとりあえず『大いなる自由』をきちんと形にしたいなと思っています。

浅倉:やはりプログラミングプロデューサーの中村がこれまで積み上げてきたものもありますし、われわれの劇場で一緒に映画を観てきてくださったお客さまが待っていてくれる、きっとわかってくださるという、お客さまへの信頼があるからやれている感じがします。

中村:信頼関係。劇場はやっぱりそこがいちばん重要だと思います。

毎日何も上映されないスクリーンを眺めていた

浅倉:休館したのが4月でしたが、この2カ月間、何にも上映されない空のスクリーンを毎日見ていて。やはりお客さまがいないと、われわれは何もできないと改めて思いました。

オープニングからの主なラインナップ(Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下)

野口:たとえばオンライン映画館も当初は若い方に向けて始めたところはあるんですが、新たな発見もあって。以前はル・シネマの映画を観るのが好きだったという方が、足が悪くなって、外出ができなくなったという時に、また観られるようになってうれしい、というお言葉をいただいて。

これからもいい意味での裏切りはありつつも、お客さまを裏切ってはいけないなと、パンデミック、そして渋谷宮下のオープンを経て思いました。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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