タワマンで横行する「マナー違反」の驚きの実態 「商業登記」は一般的にNGなマンションが多い

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なぜ居住専用のタワマンでこんなことが起こるのか。

実態はこうだ。

・所有者が自宅マンションに商業登記をしているケース

→SOHOや自宅兼事務所として使用、そもそも法人名義での購入も考えられる。

多くのマンションの管理規約では、

■マンション標準管理規約第12条、及びコメント
(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

(第12条関係コメント)
住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する。

とされていることが多い。

つまり、居住専用として使用すると管理規約で決まっており、ルール違反である。

しかし、コロナ禍によるテレワークの普及によって若干寛容の状況が見られるのと、自己所有の部屋なので、悪質とまでは言いにくいともいえる。

分譲マンションを賃貸して登記

・分譲マンションを賃貸して商業登記するケース

→最近多く、明らかな確信犯といえるのが、分譲タワマンの1室を所有者から賃貸で借り、その部屋に登記をするケースだ。

所有者(オーナー)から借りている部屋は、賃貸借契約で

「賃貸住宅標準契約書」より
(使用目的)
第3条 乙は、居住のみを目的として本物件を使用しなければならない。

と居住用として使用することが条項にあり、契約締結していることが多い。

しかし、オーナーに無断で、借りた部屋を利用して、マンション名と部屋番号を省略して登記。その住所を使い事業を行う。万が一、人が訪ねてきてもタワマンはセキュリティーが強くたどり着くのは難しい。

そもそも大規模物件で部屋番号も登記されていなければ特定するのも困難である。また、東京都港区や中央区などアドレスがよいタワマンも多く、どれも業者にとっては好都合というわけだ。そして、賃貸借契約は2年間が過ぎたら更新せずに退去する。

退去後に貸してない法人名義の郵便物などが届き、発覚するということもある。そもそも大規模物件では誤配達も多く、何度か同じ名義で届きようやく異変に気がつく。その際に元賃借人の携帯に電話するも時すでに遅しでつながらない。もっと悲惨なのは人気物件の場合だ。人気物件だとすぐに次の入居者が決まり商業登記されたことを気がつかないケースもある。

オーナーとしては、賃貸借契約の禁止事項や特約事項などで条項に盛り込むこと。管理組合としては、管理規約などでルールを強化することが抑止力につながる。とはいえ不動産登記とは違い、商業登記は把握しきれないというのが実情だろう。

コロナ禍でマンション内でテレワークする人も増え、館内で打ち合わせをしていても違和感がないのも後押ししている。まさに抜け道となっている。

どれだけ慎重に検討しても、住んでみないとわからないことはたくさんある。タワマンを含むマンションの購入を考えている方は、きらびやかなところだけでなく、維持管理などもしっかり確認してから、慎重に選んでいただきたい。

日下部 理絵 住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家

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くさかべ りえ / Rie Kusakabe

第1回マンション管理士・管理業務主任者試験に合格。管理会社勤務を経て「オフィス・日下部」を設立。管理組合の相談や顧問業務、数多くの調査から既存マンションの実態に精通する。また、穴場の街ランキングや新築マンション情報など、マンショントレンドにおいても見識が深い。
ヤフーニュースへの記事掲載は300回以上。テレビ・ラジオなどのメディア、講演会・セミナーでも活躍中。著書に『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版)、『「負動産」マンションを「富動産」に変えるプロ技』(小学館)、『60歳からのマンション学』(講談社)など多数。

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