数学のソリトン理論で渋滞、津波を解明--『とんでもなく役に立つ数学』を書いた西成活裕氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)に聞く
──ボランティアで「問題解決屋」をしているそうですね。
10年以上前から。さまざまなメーカーの開発現場の人が訪ねてくる。この本では、インクジェットプリンタ内部にあるインク補給チューブの暴れ対策をソリトン理論で解消した例を挙げた。最近の例では、羽田空港が国際化して、当然航空貨物が増える。それをさばくトラックも増え、周辺の交通大渋滞が予想された。それをどうにかしてくれと言われ、1年ぐらいかけて数学で解いた。今、その提案が採用されている。羽田空港の物流をスムーズにしているのは渋滞学と自負している。
──数学と現実とをつなぐ。
チャンスやネタがあれば、数学は大いに生かせる。とにかく数学のイメージを変えたい。解消すべき課題と現在持っているリソースとをつなぐ。そこに数学がスパイスとして入ると強固なものになっていく。数学は、人々の安全・安心・快適さを支えているものとして、現に生かされていることをぜひ知ってほしい。
(聞き手:塚田紀史 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2011年4月23日号)
にしなり・かつひろ
専門は数理物理学、渋滞学。1967年生まれ。東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了後、ドイツのケルン大学理論物理学研究所などを経る。著書に『渋滞学』(講談社科学出版賞、日経BP・BizTech図書賞)、『無駄学』、『シゴトの渋滞、解消します!』、『16歳の教科書2』(共著)。
『とんでもなく役に立つ数学』 朝日出版社 1470円 272ページ
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