そして、コメ兵ではバイヤーが一度口にした買い取り価格は絶対に変えない。それが妙な交渉を避け、かつ信頼性向上に寄与している。
どうしても若手バイヤーのみで買い取りせねばならないケースでも、ベテランバイヤーに映像をつなげる仕組みになっている。するとベテランバイヤーの意見を聞きながら適切な買い取り価格に設定できるのだ。
激しいバイヤー間の社内競争
さらに、買い取った後も、買い取り率や粗利益率など、バイヤー間の社内競争を促している。つまり同社は同業者と比べても、かなり徹底してバイヤーの「目」に教育投資しているし、買い取りのプロを育てる当然を売りにしている。
これはたくさんの店舗展開ができないことでもある。同時にそれが強みにもなる。実際に、バイヤーの確かな目を求めて、たとえば新宿店では一日あたり150~250もの査定依頼が殺到する。
ただ面白いのは、買い取りの成約率が100%ではなく80%を目指している点だろう。全員が満足するようであれば、それは買い取り価格が高すぎる。80%くらいが「それなり」であり双方の満足度がもっとも上がるのだ。
また同社では、買い取ったものをすべて「絶対単品管理」していると知られている。この単語は聞き慣れないはずだ。通常であれば、シャネルやグッチの腕時計は、型番で管理される。しかし、コメ兵では、それぞれの使用時間も異なるし、それぞれの状態も厳密に同じではなく、かつ価格も微妙に変えるべきなので、一つひとつに独立したコードを与えている。これはいわば小売業や製造業の業務システムで行われている品目管理とは真逆の思想である。
■強み②:販売の妙
買い取りの卓越さは、そのまま販売の妙へとつながっている。たとえば、バイヤーが買い取った商品があったとする。陳列して1週間もたたずに売り切れてしまったとしたら安く値付けてしまったことになる。それに対して、1カ月以上も売り残ってしまったらその値付けは高かったことになる。とはいえ、すべてを安くするわけにも、高くするわけにもいかない。
そこでコメ兵は、全商品のうち2割は、並べて2週間以内に売れるようにし、さらに2カ月たっても2割は売れ残るくらいの価格設定をよしとしている。売れるのも2割だし、売れ残るのも2割、という奇妙なパレートの法則が数値管理上の肝要なのだ。どれくらい徹底しているかというと、「あまりに稼ぎすぎた社員は注意される」とのエピソードがあるほど。
コメ兵は中古品ばかりを扱っているというイメージがある。実際には、店舗によって中古品は6~7割にすぎず、そのほかは新品の商品が置かれている。これは、私が前述した効果を狙ったものだ。新品と中古を置けば、中古品がどれだけ安価か理解できる。
さらにスマホを使ってインターネットで購入できるサービスを始めた。なんら新しさを感じないかもしれないものの、これは店頭でバーコードをスキャンしてもらうもので、高額商品ゆえに逡巡する場合が多いため、思い返して購入してもらうものだ。
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