放射線測定器が足りない! 福島県産工業製品の納入に悪影響も

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放射線測定器が足りない! 福島県産工業製品の納入に悪影響も

東京電力福島第一原発事故の発生以降、福島県下の各産業は風評被害に苦しんでいるが、製造業では、取引先企業からの製品への放射線汚染が不安視され続けているうえに、同検査体制整備の遅れから、製品納入への悪影響も出始めている。

風評被害の拡大に対応し、福島県が放射線量の測定を行っているのは公設試験研究施設の「福島県ハイテクプラザ」だ。現在、製品への検査を取引先から求められた福島県下の製造業などが、次々と製品の検査依頼を持ち込み、検査を受けたうえで同施設が発行する安全性証明書を取引先企業に提出して納品する、という負担を強いられている。

しかし、同施設の体制は、放射線測定の必要性がこれほど高まることを前提にしていなかったことから、最近、検査期間が長期化する傾向が目立ってきている。

たとえば、いわき市内の製造拠点は、同市常磐に設置されているハイテクプラザの技術支援センターに製品を持ち込むことになっているが、「測定の機械を充実してほしい」(いわき市役所)という声が強まっている。また、郡山に設置されているハイテクプラザに製品検査を依頼している福島市内の精密部品加工会社では、「検査期間は3週間かかる。これでは、製品納入に支障を来たす」と悲鳴を上げている。

原発関連の風評被害は現在、収まりそうもない状況にある。したがって、福島県下の製造業が抱く焦りは解消しにくく、検査体制の充実が求められるが、測定機器の品薄が際立っており、問題は深刻化するばかりだ。

一方、政府が計画的避難地域に指定した飯舘村では、4月17日、枝野幸男官房長官の訪村を受けた。同長官と面談した同村役場の幹部は、「乳幼児を抱えた家庭に放射線測定器を配布したいので、国に対応をお願いしたい」と要請。これに対して枝野長官は「品不足なので」と、国による測定器の確保、提供に関して明快な回答を避けたとも受け取れる回答にとどまった。

原発事故、それに伴う風評という被害を受けている福島県では、それに対応するために不可欠ともいえる機器類の不足が際立ち、かつ、その解決に向けた政府の主導力も見えない、という二重苦、三重苦の状況に直面している。事態はきわめて深刻だ。
(浪川 攻 =東洋経済オンライン)

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