収入に比べて支出のばらつきが小さいことから、60代は収入が多い人でも支出は抑制気味にしていることが窺えます。余裕のある生活をしているとみることもできますが、将来の支出増を気にして使い方をコントロールしているとみることもできます。
ただアンケート調査ですから、回答者が、この生活費のなかに税金や社会保険料などを含めていない可能性もあります。ちなみに総務省が発表している家計調査(2021年)における2人以上世帯のうち65歳以上の無職世帯では、消費支出の15.6%に相当する金額が、こうした税金や社会保険料といった非消費支出になっています。もしこのアンケート調査でもすべての回答者が非消費支出を含めていなかったとすると、それらを加えると410万円強が実際の支出だと計算できます。
それでも平均年収の75%くらいですから支出を抑えているといえますが、世帯年収が平均よりも低い層の人にとっては、他の資金が必要になることは明らかです。一般に60代に年収を聞くと、働いて得る勤労収入と公的年金の収入を想定します。しかし、それでも足りない場合には、保有する資産を取り崩して収入とする資産収入を加えて、退職後の生活費は賄われます。
世帯保有資産では大きな格差がある
そこで世帯保有資産が重要になります。60代の世帯保有資産の平均値は2291万円強ですが、バラつきの大きさが目につきます。グラフに示したとおり、世帯保有資産の塊は大きく2つに分かれています。1つ目の塊は資産の少ない層です。最も人数の多いセグメントは、全体の23.3%に達する資産0円世帯です。
資産を保有できていない世帯が2割以上を占めるというのはちょっと驚きですが、金融広報中央委員会による「家計の金融行動に関する世論調査」(2022年)でも60代の2人以上世帯で20.8%が金融資産を保有していないと回答していますから、「60代6000人の声」の回答者が特殊な集団ではありません。しかしそれにしても恐ろしい気がします。
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