駅のない南アルプス市が東京から人を呼び込む訳 子育て世帯を魅了する支援策、コストコも進出

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市によると、コストコは地元で400人の雇用計画を打ち出している。コーセーも数百人規模を雇用するという情報があったが、こちらは「地元雇用は重要なテーマなので今後さらに検討していく」(広報担当者)とのこと。いずれにしても大きな雇用機会が生まれることは間違いない。

ある市関係者は「若者の地元定着を図るうえでありがたい。ただ、就業人口規模からいって、それだけの労働力をただちに確保できるかどうか」と嬉しい悩みを口にする。

市内にはこのほかにも工業団地が整備されていて、3区画のうち1区画は進出企業が決定済み。「交通アクセスが良くなったことで引き合いが増えている」(市関係者)という。

外から人々を引き寄せる「道」に

かつて著名な脚本家を取材した際、こんな言葉が印象に残っている。

「泥道だった道が砂利道に代わり、やがて立派な舗装道路になる。でも、立派な道ができたら村が潤うかというと逆でね、その舗装された道を通って若者が村を出て行ってしまい、村には年寄りしか残らなくなる」

立派な道の開通がむしろ過疎化を進行させてしまったという昭和の時代の教訓だ。時代は令和になり、相変わらず東京一極集中は進んでいるが、それでもコロナ禍を経験して人々の意識や働き方に大きな変化が訪れた。企業や商業施設も地方に目を向け始めている。

中部横断道という一本の道の開通が、小さな地方のまちに大きな可能性をもたらそうとしている。南アルプス市が地方活性化の新たなモデルになるのか、注目したい。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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