駅のない南アルプス市が東京から人を呼び込む訳 子育て世帯を魅了する支援策、コストコも進出

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そんなのどかな田園のまちの人口移動に変化がみられる。総人口は出生数の低下による自然減の影響で2010年の7万2000人台から漸減傾向が続いていたが、この数年は少しずつ増加傾向にある。かつての転出超過トレンドから一転、2021年以降は数百人単位の転入超過に転じてきているのだ。

2021年は日本人だけで392人、2022年は261人の転入超過(総務省の住民基本台帳人口移動報告)。そして2023年、山梨県の常住人口調査の最新版(6月1日時点)では、前年同月に比べ421人(外国人含む)の転入超過となっている。

2022年の状況を詳しく見ると、転入超過は0歳から14歳までの子ども世代が154人で、その親の世代である25歳から39歳までの子育て世代が202人となっている。人口減少に悩んできた自治体としては喜ばしい傾向だ。

転入超過の要因の1つは、豊かな自然環境と移住促進政策、そして充実した子育て支援にあるようだ。その内容を市のサイトからチェックしてみた。

移住支援金 

世帯で移住の場合は、1世帯当たり100万円(18歳未満の子どもを帯同する場合は1人につき100万円加算)。ただ、東京圏からの移住、5年以上定住などの条件あり。

若者世帯定住支援奨励金 

市内に住宅及び土地を購入する人への奨励金(夫婦それぞれ満39歳以下が対象)。夫婦のみの世帯は20万円。夫婦またはひとり親と同居する子が1人または2人の世帯は30万円。同3人以上の世帯は50万円。

子育て関連

子育て世帯生活支援特別給付金を児童1人当たり一律10万円。子育て支援センターを6カ所設置。18歳までの子どもの保険診療分の医療費は無料。市立小中学校の給食費は無償。保育料や一時預かり保育の無償。

コロナ禍でリモートワークが一般化し、首都圏に近く自然環境に恵まれ、子育て支援策が充実している南アルプス市を移住先として選んだ子育て世帯が一定数いたということだろう。

2021年に中部横断自動車道が開通

南アルプス市に大きな転機が訪れたのは2021年のことだ。中部横断道の山梨―静岡間が全線開通し、中央道と接続して首都圏に直結したほか、静岡県への移動時間が50分も短縮された。この道路の開通で物流、特産物の海外輸出、インバウンド観光促進など大きな効果が見込まれていた。あいにく開通時はコロナ禍の真っ最中だったため、これまでは想定通りとはならなかったかもしれないが、その分今後に期待がかかるところだ。

この幹線道路の開通により、同市には早くも目に見える形で効果があらわれている。大企業の進出だ。

中部横断道の開通がまちを変えた(筆者撮影)
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