ソフトウェア、データ、研究開発、設計、ブランド、研修などの無形資産への投資は何十年にもわたり着実に増大し続けてきた。一方、金融危機の頃から、無形投資の長期的な成長は鈍化しているという。一体、経済のフロンティアで何が起こっているのか?
『フィナンシャル・タイムズ』ベスト経済書として話題となった『無形資産が経済を支配する』の著者による最新刊『無形資産経済 見えてきた5つの壁』から一部抜粋・編集のうえお届けする。
大いなる経済的失望とその兆候
今日の経済状況を考える時には、つい「こんなはずではなかった」と思ってしまう。世界はかつてないほど豊かで、驚異的なテクノロジーが生活のあらゆる側面を変えつつある──それなのにみんな、経済的観点からすると、何かがおかしいと確信しているようだ。
1970年代末のイギリスでは、何かがおかしいというのはあまりに明らかに思えたので、名前がついたほどだ。イギリスは「ヨーロッパの病人」と呼ばれた。今日の富裕国が直面する問題に名前をつけた人はいないが、各国で次から次へと5つの症状が見られるようになっている。停滞、格差、競争不全、脆弱性、正統性欠如だ。
こうした症状が特筆に値するのは、それが客観的に見て望ましくないばかりでなく、伝統的な経済的説明に沿わなかったり予想外のパラドックスを示したりしていて、いささか説明がつかないからだ。それらをここで簡単に紹介しよう。
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