新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界で最も豊かな経済圏ですら自然の力には勝てないことが示された。実際、このパンデミックが引き起こした被害は経済の複雑さと高度に結びついている。
巨大で高密な都市、複雑な国際サプライチェーン、グローバル経済の空前の相互接続性のおかげで、ウイルスは国から国へと拡散し、それを抑えるために必要なロックダウンの費用を引き上げた。
わずか15年前ですら、中国僻地でのパンデミックの発生など、富裕国にとってはせいぜいが小さなニュース記事で終わっていただろう。いまやグローバル化とサプライチェーン、インターネットのおかげで、別大陸でのほんの1羽のチョウの羽ばたき程度のものが、ますます大きな影響を及ぼすようになっている。
多くの人々にとって、新型コロナウイルスが人間に与えた悲惨な影響は、気候変動が今後の年月で引き起こす災厄の前触れだ。パンデミックの実際の影響と、地球温暖化の予想される影響とが組み合わさると、経済がエコシステムレベルの巨大化した脅威に弱いことが示される。
政策がうまく機能しない問題
そしてこの2つの問題に共通する別の特徴がある。解決策はわかっているのに、実際にそれがなかなか実行できないという、奇妙なギャップだ。
台湾からタイまでさまざまな国は、正しい政策を実行すれば新型コロナウイルスの死者数や経済的損害を減らせることを示してきた。同様に、経済を脱炭素化するための詳細で信頼できる計画が存在する。だが知っていることと実行とのギャップは大きく、ほとんどの国はそのギャップを埋められずにいる。
脆弱性を示す別の兆候は、中央銀行が経済ショックを抑える能力の低下だ。新型コロナパンデミックに至るアメリカの9回の景気後退で、FRBは金利を平均で6.3ポイント切り下げた。