ユニクロ「日本式接客」は海外で定着するのか メルボルン店を取材して分かったこと

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オーストラリアにおいて、店員が店に入った客に掛ける言葉は、”Hi. How are you?”が一般的だ。これに対し客は、”Good thanks. And you?”など、何らかの答えを返す。つまり、一方通行の挨拶ではないのだ。

 

”How are you?”はたしかに挨拶がわりで、店員側も本当に客が元気か知りたいわけではない。だが、客が何らかの返事をして会話が成立することが前提となっており、客がスルーして何も返事をしないと店員は不思議そうな顔をする。ちなみに、これはレジでも起こる。日本では基本的に客は一言も話さずに事足りるが、オーストラリアのレジで”How are you?”を無視してスルーすると、「なんだ、こいつ」という顔をされる。

店員の一方的な発声に慣れている日本人は、”Welcome to Uniqlo!”の連呼にも動じることはない。しかし、基本的に店員の挨拶に返すのが当たり前のオーストラリア人は、「Welcomeになんて答えたらいいの?」「何度返事をしてあげたら気がすむの?」と困惑してしまう。先述のニコラの、「疲れてしまう」というのには、こういう心理が隠れていたのだ。

日本式の朝礼にも違和感?

店員の定型的な声掛けは、「いらっしゃいませ」にとどまらない。オーストラリアのユニクロ店員はSix standard phraseを覚えており、朝礼で毎回、唱和するのだ。

Hello, my name is [insert name], how are you today?(こんにちは。○○と申します。今日はいかがなさいましたか)

Did you find everything you were looking for?(お探しのものは見つかりましたか)は2回

Let me know if you need anything. My name is [insert name].(何か必要なものがあったら言ってくださいね。私は○○です)

Thank you for waiting.(お待ちいただき、ありがとうございます)

Goodbye, we hope to see you again soon.(またのご利用をお待ちしております)

これらの形式的なフレーズに、不満を漏らすユニクロのスタッフもいる。「いかにも台本に書いてあります、っていう感じがして・・・サービスを行う流れはとても秩序立っているけれど、時々、自分がロボットのように感じることもある」(メアリーさん)。

「ユニクロの店員はてきぱきしていて、店のディスプレイも綺麗。でも接客の仕方は、オーストラリア人にはあまり合っていないように思う」と先述のニコラさんも言う。

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