つまりヨーロッパでは、BMWの中でも7シリーズは別格なのだ。長きにわたり階級社会が存在していた地域ならでは、と言えるかもしれない。そんな状況から想像すると、新型5シリーズセダンのスタイリングが、7シリーズより3シリーズに近いのは、納得なのである。
新型のボディサイズは、例によって少し拡大した。全長は先代より85mm長い5060mm、全幅は30mm幅広い1900mm、全高は35mm高い1515mmで、ホイールベースも20mm伸びて2995mmになっている。
5シリーズの歴史上初めて、長さが5mをオーバーし、幅は1.9mに達した。今や5シリーズも、日本の道を実用車として使うのは難しいボリュームになってしまった。
もちろん、7シリーズはさらに大柄だ。ただし、こちらは直近のモデルチェンジで、ロングホイールベース版に一本化したためもある。
ちなみに先代7シリーズの標準ボディのサイズは、新型5シリーズに近かった。つまり新型5シリーズは、先代7シリーズの標準ボディのユーザーの受け皿とも言える。
標準ボディは、ロングボディに比べればオーナー自らがハンドルを握ることも多いだろうから、現行7シリーズとまったく違うデザインテイストにしたのは納得できるし、逆に言えば7シリーズはロングボディ一本にしたからこそ、あの形にできたのだと考えている。
新型は、全高も5シリーズセダンとしては初めて1.5mを超えてきた。こちらは7シリーズに続いて、同じボディで電気自動車の「i5」も用意するので、床下に駆動用バッテリーを搭載することもあるだろう。7シリーズも現行型になって、フォーマルユースを意識したためもあるが、全高を大幅に高めている。
新型のスタイリングが先代から大きく変わっていないのは、このような理由がある。ただし7年ぶりの全面変更なので、ディテールは違いが見られる。
BMWの最新トレンドを入れつつも
キドニーグリルは丈がやや長くなり、ヘッドランプは吊り目気味になった。とはいえ7シリーズのように、ナンバープレートを下端に追いやるほどではなく、ヘッドランプは一般的な厚みを持つ。これまでのBMW顔に慣れ親しんだ層に、配慮したようだ。
サイドはキャラクターラインがシンプルになり、フロントドアの前のルーバー風アクセントも消えてスッキリした。電気自動車を用意したので、それにふさわしい表現にしたとも言える。
BMWデザインのアイデンティティの1つ、サイドウインドー後端の折り返し「ホフマイスターキンク」も健在だ。
3シリーズに続いて後端がドアフレームの外に張り出しており、ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションを強調している。新型5シリーズでは、ここに「5」の文字を刻んできたことが新しい。
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