BMWでセダンのラインナップの中核を担当する「5シリーズ」が、7年ぶりにモデルチェンジを実施し、8代目に進化した。
ほぼ同時に日本でも、初期生産限定モデル「ザ・ファースト・エディション」がオンラインによる先行販売受付を開始している。
本国での発表から間を置かずの日本導入に、BMWが相変わらず根強い人気を持っていることを教えられたが、公開された写真を見て「あまり変わっていない」と思った人もいるだろう。
BMWのセダンといえば昨年、「7シリーズ」がかなり大胆な変身を行い、賛否両論が渦巻いたことが記憶に新しい。一部のクルマ好きは「5シリーズもあのような変革が実行されるのではないか」と予想したかもしれない。しかし、実際はキープコンセプトといえる進化だった。
これは、ヨーロッパにおける5シリーズの立ち位置に理由があると考えている。
「カンパニーカー」という自動車貸与の制度
BMWのセダンは、もっともポピュラーな「3シリーズ」の上に、今回モデルチェンジした5シリーズ、そして頂点に7シリーズというラインナップで、「3と5」「5と7」は等間隔でクラスアップしていくと思う人が多いのではないだろうか。
しかし、ヨーロッパでは“ちょっと違うポジショニング”になっている印象を抱いている。ヨーロッパには「カンパニーカー」という制度がある。企業が中間管理職などに向けて、通勤用の自動車を貸与するというものだ。
たとえば、BMWの故郷であるドイツは、突出した大都市はベルリンぐらいだが、人口は横浜市と同等で、東京などに比べて規模は小さい。その代わりに中規模の都市が数多くあり、ミュンヘンのBMWを含めて、こうした都市に本拠地を構える会社が多数ある。
当然ながら、東京ほど公共交通網は発達していないうえに、現地の公共交通はしばしば遅延や運休があるので、自動車通勤が一般的。そのため、車両を貸与する制度が普及しているのではないかと思っている。
そのカンパニーカーとしてポピュラーな車種の1つが、5シリーズだという。もちろん、3シリーズを与えられる人も多いだろうが、相応の地位にある人は5シリーズが許され、対象となる人はそれを選ぶのではないだろうか。
一方7シリーズは、役員クラスでないとカンパニーカーとしての選択肢には入らないようだ。先日、開催されたG7広島サミットで、首脳たちを先代7シリーズが運んだのが象徴的なシーンで、世界のVIPを安全快適に運ぶのが主な役目なのである。
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